……舞台の上に、小さな人影が一つ。
その人影は動かず、ずっと立ち尽くしたままでいた。
誰一人観客のいない、冷たいホールの中。
どれだけの時間を、その人物は待っていたのだろうか。
きっと、言葉では言い表せないほどに、その人物は待っていた。
そして、これからも待ち続けるのだろう。
舞台の上に立ち続けるのは。
この物語の、たった一人の朗読者。
――鈴音学園。
それが、最期の劇の舞台に選ばれた場所でした。
物語の主人公たちが過ごした、或いは関わった学び舎。
二度の悲劇を乗り越えた彼らが戻って来た場所こそが、全てが起点、そして終点だったのです。
秘められた過去と、用意された計画と、そして揺るぎない信念。
その全てが暴かれるとき、この物語は一つの破局を迎えるのでしょう。
けれど、それはたった一つの終わりでしかなく。
また、新しく全てが始まってゆくのだとすれば。
きっとその終わりは、悲しいものではないはずです。
……さて。
始めましょうか。
長い物語の一つの終焉に向けて。
来場者の皆さま、長らくお待たせいたしました。
これより最終部【幻影回忌】、開幕いたします――
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