「……よく晴れてますね」
とある日の放課後。俺とシグレは、ミス研で時間を潰していた。
今後の方針を話し合うとは言ったものの、明確な手掛かりがない俺たちに作戦会議などできるはずもなく、だらだらと夕暮れまでの時を過ごすくらいしかできていない。
「……もう、きっちり治ったのか?」
「え?」
「いや、背中さ」
「ああ。ほぼ完治してます」
「……ならよかった」
時折背中を気にするシグレくんに申し訳なさを感じていたわけだが、完治したと聞けてほっとした。
勿論、服に隠れた素肌には生々しい痕が残っているのだろうけれど……。
「……そういえば、ランさんはどうしてあんなことをしたんでしょうね」
「あんなこと?」
シグレくんはこくりと頷き、
「実験ですよ。よく考えたら、殺された皆は実験の副作用で死んでしまったわけですけど……魂魄ゲノムの改造は、成功率が上がってきてたんですよね」
「みたいだな」
「少なくとも、必ず失敗するわけじゃない方法だったんですし、ボクにそうしたように……直接危害を加えるほうが確実だったのに」
「それは……確かに」
研究者の性というのか、どうせ殺すなら被験者として利用したかったというの可能性はあるだろうか。成功したならしたで、満足して殺していたのかもしれない。
まあ、いくら想像したところで答えはあいつだけにしか分からないことだ。
安藤蘭と名乗っていた、素性の知れぬあいつにしか。
「……あいつは、何がしたいのやら」
「パーツを探しているとは言ってましたけど、集めたら何があるんでしょうかね」
「少なくとも、いいことに使われないのだけは確かだ」
魂魄を効率よく改造するための装置。そのパーツを集めているのなら、復元された装置によって更に多くの犠牲者が生まれる未来が予想される。それだけは、何としても阻止したい。
「あいつの計画を止める。そういう意味でも、ヒカゲさんの機構は壊さなくちゃいけない」
「……ええ。手がかりを、掴まないとですね」
「そうだな。次はどこへ行くことになるのか……」
残るパーツは二つ。
次こそは必ずあいつを出し抜いて……パーツと、そしてあいつの野望を粉々に打ち砕いてやる。
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