「事件から、もう二週間か」
俺の隣にいたソウヘイが、ふいに呟いた。
ミステリ研究部前の廊下で、俺は彼と駄弁っているところだった。
あれからミス研は廃部になったが、使う予定がないことから手付かずの状態で残っていて。
俺は今でもたまに、放課後ここに来て時間を潰したりしているのだ。
「あれからシグレくんとは、何か話したのか?」
「ああ。これからどうするか……二人で決めたよ」
「意味深なセリフだな」
「うるせえ」
こいつは相変わらず、茶化すのが上手いというか。
毎度話のペースを握られてしまっている。
「……で?」
「ん。ヒカゲさんは、鏡ヶ原で使われた機械を三つのパーツに分けたと手紙に書いてた。そしてそれを、息子である俺の思い通りに扱ってほしいってな。だから、俺はそいつを見つけて壊すつもりさ。全然アテはないけども」
「ふーん……なるほど」
じゃあ、とソウヘイは笑う。
「これからもオカルト的な噂がある場所に出向いたりするわけだ」
「まあ、多分」
「それなら、俺とそう変わらないな」
「ん……?」
どういう意味だろうとソウヘイの方を見ると、彼はわざとらしく溜息を吐いて、
「俺も手掛かりを見つけなきゃいけないわけよ……モエカのね」
「ああ……」
西条萌絵香。黒影館で聞いた、ソウヘイの妹のことだ。
オカルト話に興味を抱き、そしてオカルト話のようにいなくなってしまった妹。
「……今回の件で、モエカが何かに巻き込まれてる可能性も出てきちまったんだよな。鏡ヶ原のように、どこかでGHOSTとやらの関わった事件が起きていたかもしれない。その中にモエカがいたかもしれない。俺は、その痕跡だけでも掴みたいんだ。あいつの生きた証を、辿りたいんだよ」
「ソウヘイ……」
一瞬だけ浮かべた真剣な表情を誤魔化すように、ソウヘイはすぐに笑みを浮かべる。
「……はは。そういうわけだから、オカルトの噂あるところには駆けつけるさ。俺もシグレくんと同じで、何かあれば連絡するからよ。お互い頑張ってこうぜ」
「……なんだそりゃ」
まあ、そう言ってくれるのは素直に嬉しいことだ。
頼りになる男なのは間違いないのだから。
「ま……そだな。頑張ろう」
「おう。じゃあな」
すたすたと立ち去っていくソウヘイの背中を見つめながら、俺は心の中で呟く。
――見つかればいいな。
いつか彼が、妹と笑える日が来ますように。
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