――人気のないホールに、足音だけが谺していた。
その足音も舞台裏へと遠ざかっていき、やがて消える。
後にはただ静寂だけ。
足音が向かった先、舞台裏に人影は見当たらない。
どこから出たのか、或いは本当に消えてしまったのか。とにかく今はもう、誰もいなかった。
けれど、その代わりに。
木製の台の上に、半ば投げ出されるようにして一冊の本が置かれていた。
それは、本というよりはレポートのような、薄く、素人が製本したようなものだった。
その表紙には、マジックでタイトルが書かれている。
繰り広げられた物語の、タイトルが。
――幻影綺館、と。
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