「ねえ、ミコ。あの子って、アオキくんじゃない?」
「ええ、マコ。あれって、アオキくんよね?」
「うんうん、そうに違いないわ」
「懐かしいね、ふふふ」
片方は右側の髪を、もう片方は左側の髪を留め、服はただ色違いのワンピースを着ている双子。喋り方までそっくりなので、どちらがどちらだなんて区別がまるでつかない。
そして、そんな彼女らもマキバさんのようにシグレを知っているようだった。
「ええと……ミコちゃんと、マコちゃん……だったよね。あはは、どっちがどっちかは今も分からないんだけど……」
「いいのよ、覚えてくれてただけで」
「十分嬉しいもんね、マコ」
「ね」
会話の半分を片割れに任せるような二人の話し方に、俺は、いや俺たちは混乱を禁じ得なかった。
「……これは……頭が痛いな」
「同上」
ソウヘイも手で額を押さえながら、ぼそりと呟くのだった。
「……なるほど」
マキバさんが淹れてくれたコーヒーを一口いただいてから、俺は吐き出すように言う。
「ここへ来たのはみんな、招待状に誘われたから。懐かしさと好奇心でここまではるばるやって来たんだと。……なんというか、肝が据わってますね」
「はは、それはそうかもしれない。ただ、どうして招待されたのかは気になるし、誰が招待したのかも……気になるしね?」
誰が招待したか。やはりマキバさんもそれは知らないようだ。ただ、何かしらの当たりはつけているということだろうか。
「マキバさん、招待客はこれで全員なんですか? 確か、部屋は六室あったはずだから、これでちょうどだとは思いますけど」
「違うよ、シグレくん」
「私たちは二人で一部屋だからね」
シグレの言葉に、マキバさんではなくマコちゃんミコちゃん姉妹の方が答える。その補足をするように、今度はマキバさんが、
「あともう一人、招待された子がいるよ。その子は別に、二年前のボーイスカウトの参加者じゃあないんだけど、どうして招待状が来てたのやら」
「その子は今どこに?」
「教会だよ、確か」
「お祈りでもしてるのかな?」
姉妹が首を傾げながら答える。教会というのは勿論、丘の上にある教会跡のことだ。崖崩れによって一部が崩壊し、そのまま取り残されている教会跡。元々あの事故の際にいなかった人物がわざわざ立ち寄るとすれば、むしろ当事者でないからこその好奇心、というやつだろうか。
……それか、俺たちのようにGHOSTと因縁のある人物か。
「……教会ね。ちょっと覗きに行ってみるか?」
「僕、あれから教会がどうなってるのか気になります。……行ってみたいな」
二年前の参加者であるシグレにとっても、教会は思い出の残る場所だ。気にかかるのは当然と言えた。
「……じゃあ、行ってみるか。俺も事件のあった教会がどんなところか見てみたいし」
ソウヘイの言葉に、俺も頷く。
GHOSTの実験場となった因縁の場所。まずは調べてみなければ始まらないのだから。
マキバさんたちともう少し情報交換していたい気持ちもあったが、それはまだまだ機会があるだろう。とりあえず先に教会へ向かうことで意見が一致した俺たちは、マキバさんたちに早速出掛けることを告げ、外へと繰り出すのだった。
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