★☆★【?マイホームの近く?】★☆★
ウサギ達がある一角の場所に集まって、何やら話し合いが行われていた。
「くぅ~、くぅ~」「きゅい」という鳴き声があっちこっちから聞こえる。
「おい、なんであの者の掘った穴や耕した場所、おれ達より質が良いんだよ」
「わかるわけないだろう。色々と工夫してみたが……質はあの者の方が良いんだよな」
「掘り方にも気を使ってるんだがな」
スノーが耕した土をイジリながら、自分達が耕した土と比べている。
「他に何か特別な事ってしてないよな?」
「ただ耕していただけに思うが」
「あの女の子さぁ、なんだんだろうな?」
リーダー格の一匹が空を見上げながら、不意に呟くように言う。
「なにが?」
「いや、力や基本戦闘能力ならおれ達の方が圧倒的だろう」
「そうだな、他のやつ等はもう少し固いし、強いし、すばしっこいのも居る。あの家に居たガタイの良いヒラヒラした男は、喧嘩を仕掛ける気すら失せるほど強いしな」
なぜ彼等が戦闘に参加しなかったのかは、ウサギ達には分からない。
「それなのに、ヤツからは恐怖を感じるんだよな」
「あぁ、最初に見たときは怖かったな~」
「食われるかと思った」
周りに居たウサギ達もコクコクと頷く。
思わず周りの者達と一丸となって襲い掛かってしまった。
単体でもほぼ負けない、なのに未だにあの女の子を見ると恐怖を抱く。
負けないと言ってもまともに彼女と戦闘をしてはいない。
「あの子、一度も武器を使って攻撃してきませんでしたね」
使ってきたのは巨大なニンジンだった。
それも人間が食べるものではなく、魔物が好んで食べるような無駄に魔力の籠った作物。
「そう考えると、やっぱり信用しても良いんじゃないか?」
「だよね、前にこの辺を占拠してきた人間達は問答無用でおれ達に襲い掛かってきたしな」
「今回は自分達が襲い掛かっちゃったけどね」
「あぁ、ちょっと悪いことをしちまったな」
他のウサギ達も頷き、ちょっぴり気を落としてしまう。
「それに仲間? なのか分からないが、あの綺麗な人も居るし」
「あぁ、あの人か」
「あの御方は、少女とは真逆だよな」
「近くに居るだけで安心出来るし、おれ達の撫で方も上手いんだよな」
「はっ! おいズルい⁉ おれは撫でてもらってないんだぞ」
「ふっ、アピールしないお前が悪い」
「おれも撫でてもらっていない」
「あたしも」
「お、いや、まって。待てお前らっ⁉」
撫でてもらったと自慢した一匹のウサギを数匹が取り囲み。
少し離れた位置まで強制的に連行して複数でその一匹をボコボコに殴り始める。
「とにかく、今後は協力する方針で良いということか?」
リーダー格のウサギが呆れながらボコられるウサギを見て、ため息交じりに話を戻す。
「まぁ、勝負に負けたわけだしな」
もう一匹のリーダー格のウサギが土を耕しながら言う。
「くそ、どうやったらここまで良い土になる、道具が違うのか? それともそれ以外でも土の質は上げられるものなのか」
自分が耕した土をイジリ、人間のように顎に手を当てて考え込む。
「お前、そんなに負けたのが悔しいのか?」
「それは、お前だろう」
「なっ、違うっ‼」
「そうか? ならあの少女相手に下手な突っかかりは止めることだな、みっともないぞ」
ぐっと苦虫を食い潰したように顔を歪めてクワを持つウサギを睨む。
ただ、言われている事に自覚があるのか言い返す言葉が見つからないようだった。
「ん? おい、あれなんだ?」
一匹のウサギが耳をピンッと立て、変な音のする方を指す。
そこには少女のマイホームがあり、そこから異様な羽音を立てて、数十匹の小さいモノ達が集まった、空飛ぶ黒い塊が居た。
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