「そっかぁ」
玲は何かに納得するかのように頷いた。
「とうとう……ね」
愛華はニコニコと微笑んだ。
「もう!やっとかー!もどかしかったよ、ずっと!!」
かおりは一際大きな声を出した。
「あの、色々とご心配をおかけしました……」
菜緒はすまなそうに頭を下げた。そんな菜緒を3人は嬉しそうに見つめている。ついに菜緒の恋が実ったのだ。昼食を食べながらその報告を聞いた3人は驚きと喜びでいっぱいだった。
「バレンタインに菜緒が告白するっていうの聞いた時もビックリしたけど、まさかその前に蓮見の方から告白するとは意外だったな」
かおりの言葉に愛華も同意した。
「正直ね、学年またぐと思ってた。2人がくっつくの」
「そうなの?」
菜緒はなぜか思わず隣の玲の顔を見た。玲は急にコメントを求められて少し困っていた。
「いや、わたしはその辺のこと鈍いから分かんないけど、まあじっくりのんびり進んで行きそうだなぁとは思ってた。……愛華と違って」
玲はボソッと最後に愛華への言葉を付け加えた。急に自分に矛先が向かって愛華は慌てる。
「玲ってば隙あらばそこをチクチク攻めてくるんだから……っていうか、今日はいいの!菜緒の話!」
愛華はもう一度話題を菜緒に戻そうとする。
「いや、わたしのことももう別に……昨日付き合うってなっただけで特に
「今後のね、2人のこととかを話していかないと」
「な、なに?今後の話って……」
2人の意図が分からず菜緒は戸惑った表情を浮かべる。
「あれじゃない?愛華みたいに手が早いパターンで行くのか、かおりみたいに普通のパターンで行くのかみたいなことでしょ」
玲が冷静に言い放った言葉に愛華はまた反応する。
「もう、またわたしをイジる!……まあ、でも、そういう話なんだけど」
「でも、蓮見は藤山くんみたいなタイプではなさそうだから早々に手を出されることはないでしょ」
「かおりまで……でも、確かにそうだとは思う。ものすごく慎重そうだよね」
かおりにまでイジられて愛華は少し拗ねたような表情をしたが、言ってることには同意だった。
「そういう恋愛に関する欲とかあんまりなさそうだし」
「そもそも菜緒じゃなかったら、女子と付き合うってことにすら興味がなかったんじゃない?」
かおりと愛華の間でどんどん話が進み、淳人は恋愛に対するあらゆることに関しては遅いだろうという結論になりそうになった時、玲が口を挟んだ。
「でもさ、蓮見くんも男子だからね、案外分かんないよ?」
玲が口を挟んだこと、そしてその内容が意外だったので、かおりと愛華、そしてもちろん菜緒も驚いた。玲本人も3人の反応を見てハッとする。
「あ、ごめん……なんか変なこと言って……その上手く言えないんだけどさ、変に決めつけて菜緒が困ったり傷ついたりしてもなと思って……色んな可能性を考えた方がいいじゃん?……それに菜緒と蓮見くん2人の問題なんだから、あんまりわたしたちが言うのも……ね?」
いつになく饒舌な玲に3人は不思議そうな表情を浮かべたが、玲が言いたいことは伝わってきて納得した。
「そうだよね、ごめんね、菜緒」
「勝手にわたしたちで話進めて……2人がくっついたのが嬉しくてつい……無神経だったね」
愛華とかおりは口々に反省の弁を菜緒に伝えた。玲もそれに続く。
「わたしも……あの言い方じゃなんか蓮見くんを悪く言うような感じに聞こえたよね?」
謝る3人に菜緒はかえって申し訳ない気持ちになってしまった。
「ううん、全然、わたしは大丈夫。むしろ、みんなが色々考えてくれてありがたいというか、嬉しいよ」
そう言って菜緒は笑顔を見せた。
「たぶん、これから付き合っていくと色々悩むと思うけど、ちゃんと蓮見くんと向き合いながら考えていくよ……それでもどうしようもない時はみんなに相談させて」
菜緒の言葉に3人は笑って頷いた。それを見て菜緒もニッコリと微笑んだ。
「もし蓮見くんが菜緒を傷つけるようなことしたら、わたしが蓮見くんを懲らしめるから、すぐに言ってね!」
「玲、それわたしの時にも言ってた」
愛華が笑いながら言うと、菜緒は「確かに」と笑った。
「あ、そういえば、わたしんときそれ言ってもらってない!」
かおりが冗談っぽく言うと、玲は間髪入れずに名前の部分を変えて同じ言葉を言った。
「……これでいい?」
玲にそう尋ねられて、かおりは満足そうに笑った。
「玲の時はわたしたち3人で言ってあげるから」
「あー、たぶん一生ないと思う」
愛華の言葉に対して、玲はそう言いながら笑った。そんなやりとりを聞きながら、菜緒とかおりも笑っていた。
3人は大きなお世話かもと思いながらも、心の中で男嫌いの玲もいつか素敵な恋愛ができる日が来ればいいなと願った。
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