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第37話 ドキドキの予感

公開日時: 2022年6月19日(日) 15:00
文字数:943

「蓮見くんは、マサくんの気持ち知ってたの?」


正紀の家の門を出たところで菜緒は問いかけた。


「いや、本人からは直接聞いてないけど、あいつの宮下さんに対する態度で薄々は……多分、他の部員たちも気づいてると思う」


それを聞いて菜緒はフフッと笑った。


正紀は昔からそうだ。好きな子ができると、その子に対する態度が急に変わってしまう。普段からよく正紀と接している人ならすぐに気づく。妙に優しくなったり、逆にぶっきらぼうになってしまったり……正紀本人が「この子のこと好きだ」と自覚すると、その子に対してどう接していいか分からなくなってしまうらしい。今回に限っては、菜緒は正紀がかおりと接するところを見ていなかったので分からなかったが、これまでの正紀の好きな人は本人から聞く前に全て当ててきた。


「ちなみに、どのタイミングで2人きりにさせればいいの?」


淳人の質問の意図が分からず、菜緒は頭にはてなマークを浮かべた。


「ほら、あいつ告白するんでしょ?」


「あ、そうだよね。ずっと4人でいるわけにはいかないか……」


「……花火が始まるタイミングとか?」


菜緒の意見に淳人は同意し、そこから正紀とかおりを2人きりにするための作戦を立てた。


「……じゃあ、そんな感じで」


「わかった。それでやってみよう」


「一応、マサくんにも話しておくね」


なんとなく作戦がまとまった頃、辺りはうっすらと暗くなり始めていた。


「じゃあ、俺そろそろ行くね」


「うん、気をつけてね」


そう言って淳人は自転車に跨った。そして、自転車を漕ぎ出そうとした時、何かを思い出したように淳人が少し恥ずかしそうにしながら振り向いた。


「木村たちと別れた後さ……俺と一緒に花火観てもらってもいい?」


「え、うん、もちろん」


「良かった。ありがとう……じゃあ、またね」


菜緒の返事を聞いて、淳人は嬉しそうに笑って自転車を漕ぎ出した。菜緒はその後ろ姿を見送りながらハッとした。正紀とかおりの恋のことで頭がいっぱいだったが、よく考えたら結果として自分も好きな相手と夏祭りに行くことになったのだ。しかも、2人で花火を観ることにもなった。それに気がついた途端、菜緒は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。


「どうしよう……急に緊張してきた……」


胸のあたりを抑えながら、菜緒はフーッと大きく息を吐いた。

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