「あー。なんか調子狂うな」
佑斗は大きく両手を伸びをした。今は昼休み。屋上で匠と圭吾と昼食を取りながら佑斗は物足りなさを感じていた。その原因は、葉月、沙苗、加恋だ。
「まあ、しょうがねえじゃん。ケンカ中って言ってんだから」
圭吾は佑斗をなだめるように言った。加恋が提案した通り、葉月と沙苗と加恋はしばらくバラバラで過ごすことにした。表向きは意見の相違によるケンカという理由だ。
「女子ってこじれると面倒くさいよな」
自分が少なからず原因になっているのを知らない匠は過去の女子のいざこざを思い返しながら苦笑いした。
「確かに……でもさ、翌日ケロッと仲直りしてたりするよな。あいつらもそうならねえかなー。やっぱ女子がいないと。男だけで飯食ってもつまんねえよ」
冗談っぽく言った佑斗の言葉に匠と圭吾は「こっちのセリフだよ」と声を合わせてツッコんだ。
「あ!もしさ、このままあいつらと食べられないんだったらさ、間宮さんたちのグループ誘ってみるとかどう?」
佑斗はドヤ顔で提案した。菜緒の名前が出たことで匠の顔に動揺の色が見える。佑斗は気づいていないが圭吾にはそれが分かった。
「ほら、俺と圭吾、文化祭の係が同じグループじゃん。それに圭吾と匠は席も近いし……あ、荒牧さんも圭吾の席の隣だし……匠と間宮さんもわだかまりないだろ?」
2人の反応お構いなしに佑斗はどんどんと話を進める。
「いやいや、それは節操なさすぎだし、第一オッケー出ると思わない。特に荒牧さんが俺らみたいなの嫌いだろう……あと……」
そう言って意味あり気に圭吾は匠の方をチラリと見た。
「え、匠、まだ間宮さんと何か揉めてんの?」
匠の気持ちをきちんと聞いていない佑斗はキョトンとした顔で匠を見た。
「揉めてねえって……圭吾、お前やめろよ」
匠は圭吾を睨みつける。圭吾はそんな反応がおかしくて下を向いて必死に笑いを堪える。
「なんだよ、2人して楽しそうだな。匠、何があんだよ、教えろよ」
2人のやり取りを見ながら佑斗は不思議そうに尋ねた。
「匠、俺1人で抱えるの限界。それにさ、こいつだけ知らないの可哀想じゃん。ちゃんと教えてやれよ……っつーかさ、佑斗も気づけ、っていうか祭りの時の話忘れたのかよ」
どんどん佑斗にヒントを与えていく圭吾を止めるのことを匠は諦めた。それに圭吾の言う通り、佑斗にきちんと話していないのも申し訳ない気がしてきた。
「祭りの時……?」
佑斗は必死に記憶を呼び戻している。その時は仮説ではあったが、圭吾の話にあんなに衝撃受けて納得もしてたのに、すっかり忘れているしい。
「俺が……って話だよ」
痺れを切らした匠が小さな声で呟く。
「え?何?聞こえねえよ」
「だから、俺が……好きだって話だよ」
「え、大事な部分が聞こえねえって」
「だから、俺が間宮さんのこと好きだって話だよ!」
思っていたよりも大きな声が出て匠は焦ったが、幸い周りに聞こえるほどではなかった。言った後で、匠の顔はどんどん赤くなっていく。圭吾は新鮮な匠のリアクションを見て笑いを堪えるで必死だ。佑斗はハッキリと聞いた匠の気持ちに驚いている。
「そっかー、匠、お前そうなのかー!」
佑斗はやたらと嬉しそうな反応を見せて匠の方に手を回した。
「俺、色々協力してやるからな。何でも言ってくれ!」
やたらと張り切ってる佑斗に対して匠は顔をひきつらせながら「何もするな」と言い放った。
「ひどくね?もっと盛り上がっていこうぜ」
テンションが上がりきってる佑斗を見て匠は呆れたように笑った。
「気持ちはありがたいんだけどさ……大事にしたいんだよ、今回はちゃんと本気だから……」
優しい表情をして匠はそう呟いた。見たことない顔をする匠に佑斗は驚いている。こいつにこんな顔させる間宮さんって何者だよ、と心の中で呟いた。
「そっか……わかった……俺何もしない。でも、応援はさせてな」
佑斗は匠の肩をポンポンと叩いた。匠は「おう」とだけ返事をする。圭吾はそんな2人の様子を見て微笑んだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!