アイリスは、イーサン達から離れて踞ってしまったサリアに話し掛ける。
「サリアさん、この人の皮を被ったケダモノどもに、何と言われて協力していたのか教えて貰ってもいいですか?」
するとサリアは怯えながらもハッキリとした口調でこう言った。
「...わ、私がアイリス様に虐められていたというウソの証言をすれば、アイリス様と婚約破棄した後、新しい婚約者にしてやると言われました...」
「それだけですか?」
「えっと...その...か、体を要求されました...」
サリアはさすがに恥ずかしいのか、最後の方は消え入りそうな声になった。
「応じたんですか?」
「...はい...どうせ婚約するんだからいいだろ? って言われて仕方なく...」
「はぁ...」
アイリスは大きなため息を吐いた。
「それ、このケダモノの常套手段ですよ...」
「えっ!?」
サリアが大きく目を見開く。
「このケダモノは王宮に仕える自分付きの侍女に片っ端から手を出しました。その時の口説き文句が『婚約者にしてやる』です」
「ウソッ!?」
「ウソじゃありませんよ?『初物食い』と称して純潔を散らすのが趣味なんです。そして傷物にした後はポイッと捨てるんです。そのせいで、このケダモノ付きになるのをみんな嫌がるようになりました。無理もありませんよね? 今ではこのケダモノ付きになっているのは、ベテランの侍女のみになりました。それこそ自分の母親より歳上のね。若い女は誰も近寄りませんよ?」
「そ、そんな...」
サリアは茫然自失の体である。アイリスの告発はまだ続く。イーサンはもう虚ろな目をしている。
「侍女が抱けなくなったこのケダモノは、次は下位貴族の子爵、男爵令嬢にターゲットを変更しました。王宮に呼び出し同じように『婚約者にしてやる』と言っては次々に令嬢達を食い物にしていきました。傷物にされた令嬢達は、年の離れた貴族の後妻に入るか、性癖に問題がある貴族に嫁入りするしかありません。サリアさん、あなたもこのような被害女性の内の一人なんですよ?」
「...信じらんない...」
サリアは目に涙を浮かべて、イーサンを睨み付けた。それに気付いたイーサンは怯えた表情を浮かべている。もう反論することも出来ないようだ。
会場内の殺気はピークに達しようとしていた。彼ら彼女らはイーサン達を逃がさないよう、回りを取り囲み始めていた。
そろそろ限界だろう。
アイリスはイーサン達の悲惨な末路を思い浮かべて、ざまぁ! とほくそ笑んでいた。
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