目を覚ます。
そういえば昨日、兄貴と遊んでばかりで寝る前に本を読まなかった。
本を読まずに寝たのはいつぶりだろう。
酸素マスクを外して、機械の電源を切った。
ハセガワに連絡を入れる。迎えに来てもらわなければ。
机の上にメモと、銀色で細工の細かい綺麗な鍵が置かれていた。
鍵には出雲石というらしい、黒っぽい緑色の石がひとつ嵌め込まれている。すごく綺麗だ。
どうやらこの家の正面玄関の鍵で、更には俺用のものらしい。
ちなみに兄貴は赤い石、父さんは青い石らしい。なんか意味でもあるのかな。
他には起きるまで傍に居られないことに対する謝罪の言葉が綴られていた。
全く、あの兄貴は……
伸びをして、それから紙を裏返した。
返事を書いてゆく。そして、荷物の中からカードキーのスペアを取り出した。
金色で模様のような溝がある、新品のカードキー。
俺と同じ赤いリボンをつけたので、栞のようにも見えるそれをメモの上に置いた。
ハセガワからの返信を確認し、部屋を出た。
階段に来ると、やっぱり怖い。また、あの映像が頭の中に流れてくる。
でも、大丈夫。
深呼吸をして、ゆっくり降りた。
可能な限り何処にも寄らない。顔とか洗いたいけど、また動けなくなると怖いし。
メモの上にあった鍵で、玄関を解錠する。
「行ってきます」
返事はなかった。扉を開けて、外に出た。
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