【第1話】ゲームの世界へ

(頭がズキズキする……俺は何してたんだっけ？　確か……ゲームを起動してから……)

トンカチで殴られたような痛みと吐き気に襲われながら、身体を起こす。

(ここは……)

　自分の目を疑った。自分の部屋かと思っていた場所が木々に囲まれていたのだ。スゥーと息をすれば、青々とした草のにおいがする。

(なんだ……ここ……？　さっきまで……っう！)

　頭痛がより一層悪化し、その場に倒れこむ。その激痛は一向に治まらないどころか徐々に痛みを増していく。

(頭が割れる！)

　耐えられないほどの痛みにゴロゴロと地面を転がる。

　ドン！　と頭をおもいっきり叩き痛みで痛みを掻き消そうとする。じ～んとする痛みが残る。

　叩いた痛みが収まった後、立っていられないほどの頭痛が治まっていく。そして目の前に細長い横長のバーのようなものが現れた。

(今度はなんだよ……)

　見覚えがあるそれを指でタップしてみる。

　水原涼　Lv1　種族:人間

スキル

・情報

　それはいつもゲームをやっている時に見ていた【ステータス】画面だった。それをまじまじと見る。

(これって……)

　今夢を見ているのだろうか。RPGのゲームをやったことがある人なら見たことがあろう画面が目の前に出ていた。

　今起こっている出来事が現実なのかそうじゃないのか。そんなことは涼には分からなかった。

　とりあえず自分の家じゃないのは分かった。考えていてもしょうがないと止まっていた足を動かす。

(少し歩いてみよう。何か見つけられるかも知れない)

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　歩いて数十分が経った時、お腹がグゥ～と鳴りだし足を止める。腹をさすりながら周辺を見渡す。

(そういや昼何も食べてなかったな……この辺に何か食べるものは……)

　ガサガサ

　草むらで何かが動く音がした。その音に身構える凉。

　ひょこ

　出てきたのは可愛らしいウサギの頭だった。それを見て肩の力が抜けていく。

(なんだよ……驚かせやがって)

　見た感じ動物園なんかで見れる普通の大きさの白いウサギだ。凉は近づき、その見た目から触りたくなり手を伸ばした。

　ピコン！

(なんだ？　この音……！？)

　キラーラビット　Lv12　種族:魔物

スキル

・駿足

・硬い顎

・部分強化

　それは先ほど見たステータスバーだった。だが、今はそんなことを思う暇はない。

「キシャーーーーー！！！」

　突然口が凉の身体位の大きさになり、かぶりつこうとしてきたのだ。

「うお！」

　急いで伸ばした手を引っ込め横に転がる。

　口をあけ突っ込んできたキラーラビットは涼の後ろに立っていた太い樹木に噛みついた。

　バキバキ！

　噛みついた樹木には噛み跡がクッキリと残っていた。

それを見てゾッとする。

　人がどうやっても、それこそ道具を使わないとここまでなることはない。そのレベルの木がいとも簡単に削られていた。もし噛まれたら？　骨なんていとも簡単に噛み砕かれるだろう。

冷や汗がドバっと出ているのが分かるほど、背中が濡れていた。

「グルルルルル！！」

　唸り声を鳴らしこちらに近づいてくる。

　初めて死ぬという感情が襲いかかる。足が震え動かない。

(やばい。逃げないと……動け動け！)

　ガクガクと震える足を叩き無理矢理押さえこもうとする。

　その間にも、体勢を整え再び飛びかかる準備をしている。

　足の震えが止まった！早くここから離れないと。

すぐに立ち上がり、草むらの中を駆け抜ける。自分の足の音ともう1つの音が聞こえくる。

(追ってきてる！？　足を止めるな！)

　だが、徐々に詰められてきている事が分かる。走る音がすぐ後ろまで来ている。

　もう駄目だと、歯を食いしばり、目をつぶった。

　ピコン！

スキル【駿足】を手にいれました。

(え？)

　謎の声と共に、足が軽くなり距離を離すことに成功した。久しぶりに走ったせいか膝が笑っているのが分かる。逃げきれた安心にその場に座り込む。

「ハァハァ……もう追ってきてないか」

　ピコン！

水原涼　Lv3　種族:人間

スキル

・情報

・駿足

(まただ……またこの画面だ。しかもレベルが上がってスキルが増えてるのか？)

　ステータスのスキル一覧に【駿足】が追加されていることに気づく。おそらく無事に逃げきれたのは名前的にこのスキルのお陰だろう。

(これってやっぱり……)

　今までの出来事を整理する。

目の前に出てくるステータスバー、それと先ほどのウサギ。どう見ても現実じゃ見たことがない。

　ここはもしかして現実ではないのではないだろうか。

　そんな非現実な事を思い首を横に振るが、では今まで見たものは何なのかという話になる。幻覚？　そんな薬に手を出した覚えはない。

(とりあえずここから出ないと……か)

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