ふうっ
周りの人たちは、アトラスタワーから飛行してきた私に気づいていない。
光学迷彩はやっぱり便利だ。
ホログラフィーによって周囲の環境映像を映し出すことで、完全に周りと同化できている。
この状態でいる時、私は自由に街を散策することができる。
人混みの中だろうが、道の真ん中だろうが、どこでも。
開けっぱなしになった車の中を見た。
パトカーがサイレンを鳴らしながら近づいてくるのがわかった。
カーチェイスしていた方のパトカーは後方に停められてて、警官が事故現場の整備を行おうとしていた。
早いとこ調べてずらかろう。
痕跡痕跡…っと。
見たところ、仕事で利用している車っぽかった。
軽バンの後ろの座席は倒されてて、工具やら何やらがぎっしりと積まれている。
電気工事か何かの社用車っぽかった。
車のボディにロゴが入ってた。
“上野電工株式会社”
タバコ臭い匂いと、飲みさしのブラックコーヒー。
ラジオはかかったままだ。
ダッシュボードにはレシートが散乱してて、助手席の足元には、少し大きめのポリタンクがスペースいっぱいに置かれていた。
エンジンくらい切っていけばいいのに。
相当焦ってたんだろうな。
焦るにしても、もう少し先のことも考えればいいのに。
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