グッ
腕の筋肉が弛緩する。
体の底から湧き上がってくる熱。
集中型の私にとっては、近接距離こそが本領を発揮できる領域だった。
サンダー・ボールのような攻撃はまだまだ扱いが難しい。
その反面、近くからなら。
ゴォッ
全身に集まってくるエネルギーは、髪を逆立たせた。
手のひらから放出される激しい電流。
気絶させるつもりで、押し込むように腕を伸ばした。
バシャッ
——感触が、…ない?
手応えはあった。
背中に触れた、その瞬間までは。
違和感を感じたのはその後だ。
押し込んだ右手から伝わってくる感触が、想定しているよりも軽かった。
電流が流れると同時に敵の体が崩壊する。
ペットボトルの容器が割れて、漏れ出してきた水。
表現としては、それに近かった。
水が流れる音。
湿った空気が周囲に流れ、ぽこぽこと泡が弾けていく。
(分身…?)
崩壊した体は「水」でできていた。
それが“偽物“であることはすぐにわかった。
——しまった
敵はやっぱりアイツだ。
純粋系統特有の性質に、分身。
こんな手を使うのはアイツくらいだ。
だとしたら、どこにいった…?
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