KICK BACK -約束の地、水平線の向こうまで-

本当の大人なんているんですか
平木明日香
平木明日香

第2話

公開日時: 2024年12月9日(月) 21:36
更新日時: 2024年12月16日(月) 21:02
文字数:794


 東京支部の総務局からは、基本的に“禁止“って通達されてる。


 何がって、「学校」に行くことが。


 私たちの間では当たり前の話だった。


 公共の場で生活すること自体危険だった。


 学校はもちろん、街を歩くことでさえ。


 正体がバレたら即刑務所行きだし、仲間まで危険に晒すことになる。


 安全に暮らすには人々の目を避けなければならず、表立って生活すること、社会の中で生きていくことは、一種のタブー扱いとなっていた。


 ひと昔前に比べれば、だいぶマシにはなっていた。


 「スキルメーカー」


 ——つまり、特別な力を使える”異能者”が生まれた頃は、人権なんてあったもんじゃなかった。


 見つかり次第即武力行使をされ、銃を突きつけられていたんだって。


 場合によっては、街中が“戦場”と化すことも。



 時代が進むにつれて情報が整備され、私たちの存在が少しずつ理解されるようになってきていた。


 同じ「人間」で、同じ「人権」を持っている。


 そういう声も少しずつ増えてきていた。


 とくに、この日本では。



 ただ、危険な存在であることには変わりなかった。


 まだ社会では認められてなくて、“テロリスト”だって。


 人間にも悪い人がいるように、スキルメーカーたちにも普通に犯罪を犯す奴がいる。


 一緒にしてほしくはないけど、そう簡単な問題じゃないっていうかさ?


 それと、生身の人間じゃ、まず太刀打ちできない。


 スキルメーカーたちの「能力」は、それほど危険だった。


 スキルメーカーが1人いれば、一部隊を殲滅できるほどの力があった。



 だって、「モンスター」だよ?


 私たちを取り締まる国際機関が、ヨーロッパ連合(EU)を中心として立ち上げれてるんだけど、その名称はWMDM。


 日本語に訳すと、“世界魔物討伐機構”(World Monster Defeat Mechanism)っていう。


 ひどくない?


 同じ人間だとか人権があるとか、そういう声が霞んじゃうっていうか、バケモノにしか見られていないっていうか。



読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート