敵は多分、私の位置に気づいている。
光学迷彩は解いた。
戦闘力を底上げするには、余計な“装備”だったから。
「おとなしく出てきなよ!相手してあげるから」
私の声かけも虚しく、マンションの外を出て逃亡を図った。
…はあ
逃げられると思ってんの?
悪いけど、走るのは得意なんだ。
下半身に電気を集め、肩の力を抜く。
エア・シュートは路上の壁に立てかけておいた。
今は邪魔だ。
普段の移動用には便利だけど、本気を出せば生身の方が“速く”動ける。
——すぅ…
抜いた力を引き戻すように息を吸う。
腰を落とし、少しだけ前のめりに倒れた。
しならせた膝。
低く落とした重心。
股関節を内側に捻った。
ぶら下げた腕を遊ばせながら、関節を柔らかく“伸ばす”。
指先に、電気が集まる。
ダンッ
地面を掴む。
予備動作は必要ない。
一気に距離を詰める。
幸い、周りに人はいなかった。
今なら力づくで肉弾戦に持ち込める。
肉弾戦に持ち込めさえすれば、多少強引になってでも身柄を拘束してやる。
問題は、敵の“戦闘力”。
手に負えないやつじゃなかったらいいけど、こればっかりはなぁ…
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