KICK BACK -約束の地、水平線の向こうまで-

本当の大人なんているんですか
平木明日香
平木明日香

第53話

公開日時: 2024年12月31日(火) 20:17
文字数:559




 ゴォォォ…





 飛行機雲。


 学校の屋上で、空に敷かれた一本の線を目で追っていると、パンを口に咥えながら話しかけてくる子がいた。


 成瀬素子(なるせもとこ)だ。



 「まーたこんなとこにいんのか。探したんだぞ?」



 咲と同じく、彼女は同じクラスメイトだった。


 男まさりな性格で、ちょっとギャルっ気がある。


 後輩からすごい慕われてて、リーダー気質のある子だった。


 口よりも体が先に動くタイプ?


 甘ったるい生クリームなんかより、糖分ゼロのブラックコーヒー。


 そんな印象の子だった。



 「何か用?」


 「用がなきゃきちゃいけないのか?」


 「そういうわけじゃないけど…」


 「じゃ、隣いい?」


 「どーぞ」



 塔屋の梯子を登り、コンクリートの上に寝そべる私の横で、カフェオレのパックに穴を開ける。


 相変わらず微糖派なんだね。


 私だったら、絶対に買わないやつだ。



 「この前の話、気になったんだけどさ」


 「なんか話したっけ」


 「スキルメーカーの話。覚えてないのか?」


 「…ああ」



 そういえば、そんな話もしたな。


 みんなはどう思ってるのか、ちょっとだけ気になってた。


 聞くつもりはなかったんだけど、成瀬ん家で一緒にテレビを見てたら、たまたまね?



 「普通に私たちの近くにいるって話。ヨーコはだいぶお怒りみたいだったけど」


 「だね」


 「水樹はどうなんだよ?」


 「どうって?」


 「…いや、ずいぶん肩持ってるなーって思って」



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