“普通に生きる”ってどういうことか、ずっと考えてきた。
研究所の中で生まれて、あてもなく外に飛び出した。
何が正しいのかなんて二の次だった。
生きることに必死で、ただ、逃げることで精一杯だった。
いつも、窓の外を見てた。
理由なんてなかったんだ。
島の外に出て、海の向こうに行く。
そう思うことが、どこから来たものかさえわからなかった。
『とにかく気をつけろ?最近取り締まりも厳しくなってるって噂だぞ?』
『エイザも経験してみれば?席は用意しとくし』
『学校なんか行かねーよ。行ったってどうせ役に立たねーんだ』
『身内ばっかのとこにいたら、それこそ息が詰まっちゃうよ?』
『水樹と違って人見知りなの。孤立したらどうすんだよ』
『どの口が言ってんだか…』
私が学校に行ってるのは、エイザしか知らない。
2人だけの秘密なんだよね。
バレたら怒られるだけじゃ済まないってのと、せっかく今まで積み上げてきたものが、全部台無しになっちゃうって可能性があるから。
ここまで大変だったんだ。
友達を作るのも。
学校に忍び込むのも。
スキルメーカーたちに、「身分」は存在しない。
住民票の登録だってしてないし、保険証だって無い。
社会の中では幽霊のような存在で、スマホの契約だってろくにできないんだ。
身分を証明するものが、何もないから。
じゃあどうやって学校に忍び込んだのって?
…まあ、それにはちょっとしたコツがあって。
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