ピピッ
『そっちはどう?水樹』
『どうもこうも、退屈だよ』
『今日バトルアリーナで練習があるんだけど、来る?』
『行ってもいいけど、今日デートだし』
『デートぉ!?誰と??』
『彼氏と』
最近、彼氏ができた。
ポケットワークスと呼ばれる通信機器で、友達とメッセージのやり取りをしていた。
藍浦エイザ。
彼女は【-23andMe-東京支部】所属のメンバーの1人で、「炎熱系統(フレイヤ)」の能力を持つスキルメーカーの1人。
品川区に拠点があるスキルメーカーたちのチーム、「ブレイズエッジ」のメンバーで、私とは同じ班に所属している。
ま、ようは“同郷の仲”ってやつ。
バトルアリーナで練習なんて、暑苦しいから嫌なんだよね。
どうせ基礎練とか地味なことばっかでしょ?
だったら普通に彼氏と遊ぶよ。
エイザにそう言うと、彼女は怒鳴ったように「聞いてない」と言ってきた。
『彼氏って、いつできたの?!』
『最近』
『おいおい、大丈夫かよ…』
『別に普通じゃない?他のチームの子だって、もう一年くらい経つって言うし』
『あのな、バレたらお前だけの責任じゃなくなるんだぞ?』
『責任責任って、そんなの気にしてたら普通に生活できないよ』
『その“普通”にアタシたちは属してないんだよ。わかる??』
『はいはい』
エイザの言いたいことはわかってる。
そもそも私たちは人類の「敵」だ。
世界政府に追われてる国際的な犯罪者であり、存在自体が「違法」な存在。
癪な話だけど、私たちが安心して暮らせる「場所」なんてないんだ。
それはわかってた。
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