僕の初恋の超絶美少女が僕のストーカーだった件。

和橋
和橋

第4話 仲良くなりたい、だけだったのに。

公開日時: 2020年9月3日(木) 20:19
文字数:2,625

それから私はまず彼と仲良くなろうとした。


しかし、ここで思わぬことに広く浅く作ってきた友人関係が役に立ち、いつも仲がよさそうな池田君に天根川君のメッセージアプリの連絡先をもらえないか頼むと「好きなのか?」なんて聞いていたからめちゃくちゃ焦ったけど、「この前助けてもらったからそのお礼よ」と、言ったら何とかゲットすることができた。その時彼は疑う様な目でこちらを見ていたから、バレてるかもしれない。


しかし、連絡先はきちんと貰えたので良かった。


でも、そこからが問題だった。


メッセージを送れない。何度か文章を打ち込んだが、最初に書いたメッセージは長すぎてダメ。2回目は逆に『よろしく』だけで味気ない。3回目は文章が成り立っていない。4回目にしてやっといい感じに打てたが、彼になんと思われるか怖くて送れなかった。


まずいわ。


結局メッセージを送ることなく終わった。


しかし、それから学校で無意識に彼を目で追うようになってしまった。


これはまた、まずいわ。


彼を見ないようにする、そういう意識をしていると彼を見てしまった時に「あぁ~っ!みてしまったぁぁ~~~~」と逆にもう一段階意識してしまう。


と、こんなことをしている内に私の中での彼の存在は段々と大きくなっていった。


もちろん男子を避けていた私にとってこんな気持ちは初めてであり、未知の物だったのでどうすればいいか全く分からなかった。


しかし、彼を知りたい。彼と仲良くなりたい。この感情の方が日に日に大きくなっていき、私はだめな事だと理解はしていたが、放課後彼を付け回すようになっていた。もちろん最初はかなり遠くから、そっと見ていただけだった。


そっと見ているだけで私の心は満足だった。


しかし、人間は現状維持にどうしても不満を持ってしまうもの。


だんだん彼を見る距離が近くなっていく。1枚だけ、あと1枚だけ、と自分に言い聞かせた写真は彼専用のフォルダができるくらいに多くなっていた。


毎晩その写真を見ると一日の疲れが飛んだ。明日も頑張ろうという気にもなれた。時には私の夜のお供にもなってくれた。


とにかく彼を見ているだけで幸せだった。これがいけないことだとわかっていても、やはりやめることが出来なかった。


それに最近は学校も楽しくなってきた。なぜなら、彼を合法で見放題なのだから。


家に帰っても家族に「最近楽しそうだね」なんて言われることが増えた。


母には「彼氏とかできたんじゃないの~?」なんて聞かれた。


しかし、その瞬間私の心がズキリと痛んだ。もし、この行為がばれれば私は警察行きなのはもちろん、彼にも絶対嫌われてしまう。


だけど私の行動は止められるものではなかった。この時私は酔っていた、とも表現できるだろう。


あ、もちろんそんなことを母に言うわけもなく私は「そんなのじゃない」とそっけなく返した。


そんな、いつも通りに帰宅している彼を見ていたある日。


彼はいつも一緒に帰っていた池田君と帰っておらず、一人だった。


しかし、いつも通り、道に迷っている人がいれば声を掛け、道を案内し、困っている老婆がいれば荷物を持ってあげていた。


そんないつも通り善人な彼をいつも通りそっと見ていたつもりだった。




彼はいつもとは違う道を通っていた。池田君がいないので近道を通っているのだろう。そう、思っていた。


しかし、彼の家からは遠ざかるばかり。


それに彼の歩くスピードは少しずつ速くなっていた。


それに追いつこうと私も歩くスピードを速める。


しかし、彼が三つほど角を曲がった途端走り出した。


途端に私は思い出した。自分が「ストーカー」だ、ということを。


池田君がいないせいか、自分の中のセーフティーが効かなくなっていた。


家に帰ると私の行ってきた行動がばれたのではないか、距離は……保っていたつもりだったが、顔を見られたのではないか、そんな心配が私を襲った。


彼に嫌われてしまう。彼に嫌われてしまう。彼に嫌われてしまう。


やだ。やだ。やだ。


しかし、やめられなかった。


彼の写真を見るとそんな気持ちはどこかへ行ってしまう。


今日はいつもより彼の近くに行けた。彼を近くで見れた。


そんなことを考えながら幸せな気持ちに浸っていると、急激な眠気に襲われた。


写真に「また明日ね」と声を掛け明日に備え眠ることにした。






私はいつも通り学校に登校し、いつも通り授業を受け、昼休み。


私と彼は同じクラスで声が聞こえるくらいには席が近い。


彼の声を聴くことに集中するため、昼食時はその席のまま一人でご飯を食べている。


彼の声を聴いて癒されていると、私はとある会話を聞いてしまった。


「それって、ストーカーじゃないのか?」


バレた。終わった。ヤバい。不安で箸を持つ手が震える。


しかし、会話を聞いていくと、バレていないようだった。が、震えは止まらなかった。


酔いは覚め、今までやってきた行いをを思い出し、青ざめる。


ただただ後悔でしかなかった。


謝ろう。嫌われてもいい。


……あれ?嫌われる?ヤダ。ヤダ。ヤダ。


でも謝らなくちゃ。でも嫌われたくない。あぁ。どうしよう。


しかし、酔いはさめていたおかげか、謝ろう、そう決心した。


ワガママなのかもしれないが、学校に居るときには謝りたくなかった。


当然だが、学校には生徒がいる。そんな場所でストーカーをしていた、なんてことを彼に伝えれば学校で騒ぎになって、私がヤバい奴だと気が付かれてしまう。


自己中心的だということも、ワガママだ、という事もわかっている。だけど、それだけは避けたい。


なので最後のストーキングのつもりで、今日帰宅している途中に直接伝えよう。


しかし、予想外の事が起きた。


委員会のはずの池田君が一緒に帰っていた。もちろん池田君の前で言うこともできない。


今日は諦めよう。


そうして家へと向かう。足取りはなんとなく重い。


家に着くと、誰も居ない。久しぶりに親よりも早く帰ってきた。彼のストーキングが忙しく、帰ってくるのはいつも6時半頃になってしまうからだ。


私は決心した。明日こそ、伝える。


しかし私の決心は意味の無い物になってしまった。


次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、天根川君は池田君と帰っていた。


いつものストーキングなら何も問題はなかった。でも、今回は別だ。


まずい。


結局この週は伝えることができなかった。


両親から一緒にショッピングセンターに行かないか、と誘われたが、今はそんな事をしている気持ちではなかったので断った。


結局何もせず家で悶々としたまま土、日の2日間を過ごしたのだった。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート