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雲が遥か下の方に見える。
やがて、日が沈み。大きな月がガラステーブルに映える。俺と佐江島さんと妹は囲んでテーブルに座っていた。
窓際に目を移すと、東からの風が強いというのに、グングンと空を前進するその大型船は、超大型飛空船のようだった。窓の外には広大な中庭やベランダガーデンがある。
「でも、助かったわね。地面が顔面で……」
「はあ……」
「普通どっちも助からないよね? あ、でも。その前に普通落ちないよね?」
妹の言う通りだ。
だけど、多分ね。俺の異能力のお蔭さ。
佐江島さんは、大型飛空船から落ちたのだそうだ。
停泊のために、超低空飛行していたとはいえ、そこから落ちてくるというのは、よっぽどの訳があるに違いない。
だが……佐江島さん曰く。
「鳥が空を飛んでいたから」
だ、そうだ……。
可愛い鳥を見つけたので、つかまえようとして、手摺りから手を伸ばした結果。鳥のようには飛べずに落下したのだそうだ。
佐江島 萌理さんがリーダーの4人組アイドルグループの名前は、STARZM・4(スターゼモフォー)で、星で絶対萌え死の意味なんだそうだ。
今や、国民的アイドルグループで、日本で知らない人は相当な田舎か、山の中か海の中で暮らしているはず決定だった。
正直、嬉しい。
佐江島さんと一緒に、これから海上浮上都市アトランティスへ行くのだから。
そこでは今朝、テレビでやっていた。全世界最大級のフェス T.W.A.F(ザ・ワールド・アイドル・フェスティバル)2030が開催されている。
テレビでは、ほとんど観ていなかったが、かなり大きなフェスなのだ。
そして、なんで一周間後にイカ釣り船に乗るはずの俺が、こんなところにいるのかという疑問は今でも残ったままだった。
「それにしても、海野くん。妹さんも可愛いわね」
「へ? そうか?」
「へへーん!! ニコニコ」
「あら? ほんと笑顔も可愛いわね!」
妹がニッコリ笑って、ガラステーブルに映る自分の顔を覗いた。
「クスクス……あ、それはそうと、海野くん。ありがとね。一緒にアトランティスへ行ってくれて」
「へ? あ、そうだ! 記憶が蘇ってきたぞ! あんまり色々あるんで、忘れてたーーー! 寝坊して遅刻していた佐江島さんにのこのこついていったら、そのまま飛空船に乗ってしまい。船が突然発進してしまったんだった!!」
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