古葉さんが半ば呆れて言って、音星が受け答えした。
「家の箪笥にあったのか?」
「ええ。この鏡は、そう遠くはないご先祖さまの代から、いつの間にかあるんですよ」
「確か、浄玻璃の鏡って。閻魔様が死んだ人の生前の善悪を見極める際に使う鏡だったっけ?」
「ええ、そうなんです。それと、この鏡は欠片ですから、地獄と現世に共通して存在しています。なので、地獄とこの世を、行き来することのできる光触媒というものになるんですって」
テーブルの上の手鏡をおじさんが持ち出して、おばさんと覗きながら感心している。
「へえ。この鏡で地獄へねえ……」
「そうかい。大したものだな」
おじさんとおばさんが頷き合う。
俺は八天街の裏道にある神社の鏡も、これと同じ浄玻璃の鏡の欠片なんじゃないだろうかと考えていた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!