巫女と勇気の八大地獄巡り

勇気リンリンの地獄旅
主道 学
主道 学

4-24

公開日時: 2024年2月29日(木) 18:59
文字数:1,274

  リュックサックがたくさんの発汗で、水分を吸ってしまい。ぐっしょりと重くなってきていた。腕の中のシロも息も絶え絶えだった。


 広大な場所だけど、そこに充満しているムッとくるような熱気で、呼吸もかなり苦しい。


 隣を歩いている。音星も汗で水気を含んでしまった布袋も背負っているし、呼吸も苦しそうだった。

 

 火のついていない釜土まで歩くと、あることに気がついた。

 

 俺は、ここ地獄へは茨城から、はるばる妹を探しにきたんだよな。


 炎や煮え湯で焼けそうになったり、高熱で死にそうになったり、でも、肝心な妹を少ししか探せない。それだと、まったく意味がないんだよ!


 うーん。


 ……あ、そうだ!


「音星。すまないが、すぐに八天街へ戻ろうよ! 八天街の洋服店とかで服を買ったりして、ここ地獄の熱さ対策をするんだ。これから下層へ行けば行くほど、八大地獄はもっと熱くなって来るんだしさ」

「……それはそうですね……。それでは、ここの熱さとも、しばらくお暇しましょうか。一旦戻りましょう」


 音星は無理に笑顔を作って、答えてくれた。

 手鏡を布袋から用意すると、今度はシロと一緒に俺を鏡に映した。

 

 ――――


「あっちっちーーぃ! あつい! やっぱ、夏だけあって八天街も暑いな!」

「ふぅー、そうですね」


 俺は真夏の猛射の中。八天街のロータリーで、大量の汗を拭う。リュックサックがもうずぶ濡れだ。音星は布袋からタオルを取って、俺の顔を拭いてくれている。シロは八大地獄から、ここ八天街へ手鏡で移動したというのに、至って驚いた様子はなかった。


 そいうや、元々シロは猫屋にいたというのに、そこから八大地獄まで来たと言うのに、いつもと変わんない。普通だったな。


 それにしても、どうやってこれから八大地獄の最下層を目指そうか?


 段々熱くなってくるんだよな?


 その時。パァアンンンンー。と、クラクションが鳴った。見ると、一台の車が凄い速さで、交差点を横切り通り過ぎていった。


「まあ、お急ぎのようですね。でも、この暑さの中大変でしょうに」

「ニャ―」


 ……


「いや、音星。車の中には……クーラー??」

「はい?」

「そうだ! クーラーがあったぞ! クーラーボックスやクーラーバッグなどだ! 早速、店を探そう!」

「火端さん! さすがです! これで大叫喚地獄での妹さん探しは大丈夫そうですね」 


 音星の誘いで真夏の商店街へと向かった。八天駅のロータリーから少し民宿とは別方向へ歩く途中にそれはあった。ちょうど、交差点四つと陸橋を渡ったところだ。


 八天街の街の人で賑わっている八天商店街。

 ここになら、叫喚地獄から更に下層の熱さでも、十分対策ができるクーラーバッグなどがあるだろう。


「あらー、巫女さんと火端くん?」

「あら? こんにちはー」

「あれ? おばさん?」


 八天商店街には、買い物袋片手の民宿のおばさんがいた。どうやら、買い出しらしい。


「おばさん? 買い出し?」

「ええ。魚と卵が足りなくてね」

「ええ? もうないの?」

「うーん……またうちに新しいお客さんがくるのよ。だから、足りないのよ」

「そっか」


 真夏の真上から猛射が降り注ぐ昼時。

 八天商店街では、夕飯の買い物をする主婦たちが多かった。


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