激しい強風の中だというのに、物凄く長い大蛇のような首を円を描くように、洞窟の上下左右の壁面に素早く這わせてきた。そして、俺たちを追い掛け出した。ろくろ首の体自体の走りはあまり速くはないが。それでも、俺と音星は全速力で洞窟の風の中を奥の方へと走った。
「風! 強すぎないか! 足が鈍くなってくる! このままじゃ喰われてしまうぞ!」
「平気です! あっち! もうすぐ出口ですから!」
その音星の言葉通りに、洞窟の行き止まりに差し掛かると。ちょうど、T字路になっていた。左手の道へ音星は走った。俺もそっちへと走ると、この洞窟の出入り口が見えた。でも、なんだか洞窟の出口が真っ赤になっている。
「この先は等活地獄です! 熱いですので、気を付けて下さい!」
「ああ、あの殺生をした人が堕ちる最初の地獄か! 針山とかがあるんだっけ!」
「そうです! よくご存知ですね!」
等活地獄は、針山を歩かされる刑に、真っ赤に焼けた鉄岩の上で体を切断される刑がある。そして、それらの刑は一度ではない。死んでも蘇生させられ、それが繰り返されるといわれるている。
「地獄マニアだからな! 行くのは初めてだが!」
「あ、もう一つ気を付けて下さい! この先、至る所に針山があるんです! 大きい山なんですけど、うっかり気を抜くと地面にも生えている小さな針山を踏んづけてしまいます!」
「わかった!」
洞窟の出口を音星と出た。
まだ、ろくろ首の蛇のような長い首が追い掛けてきていた。
等活地獄は、地獄だけあって、ぶすぶすと煙を上げ。焼けた鉄岩が散乱していた。地獄の鬼たちが、生前は罪人だったはずの半透明の人型である魂を、鉄岩に括り付けては焼いている。その背後には、巨大な針山の山々が聳えていた。
辺りは人型の魂と熱気が充満し、まるで地獄のバーゲンセールだ。
人型の魂は背格好は皆同じだった。
恐ろしい苦しみに対しても。
苦痛に顔を歪めるものも。
悲鳴を上げるものも。
誰一人としていない。
「火端さん。あっちへ!」
「あ、おう!」
俺は音星の指差した方向へと走ろうとした。
案の定。
それは、針山に取りついた。
地獄の鬼用のトロッコだった。
「あそこに隠れましょう!」
「ま、待て! あれはトロッコだぞ! 走り出したらどうするんだ! 下は針の山だ!」
そういえば、仏教では、殺生や盗みや邪淫、飲酒、妄言、邪見をした者が地獄へ落ちるっていわれているんだ。
俺の妹は、飲酒に盗みに殺生に……そして……死体遺棄まで?!
きっと、地獄の奥底にいるはずだ。
だけど、俺にはそれが冤罪なのはわかっているんだ!
必ず探し出してやるぞ!
・俺たちはトロッコの中へと急いで走っていった。
だが、箱の中に入ると同時に弾みでトロッコが動きだしてしまった……。
「きゃーーー!!」
「い、いわんこっちゃないーーー!!」
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