巫女と勇気の八大地獄巡り

勇気リンリンの地獄旅
主道 学
主道 学

9-57

公開日時: 2024年8月26日(月) 23:00
文字数:855

「なあ、シロの奴はここへ来たがっていただろ? あいつはここら辺の出身なんだってさ。なんかさあ、飼い主が東京の人だってさ」

「へえー、シロが? ひょっとしたら、あの黒猫はシロの親猫なのかな?」

「ああ、って。きっと違うんだよなあ。あの黒猫はなあ。俺の前に通っていた仕事場の前で、いつも鳴いているだけなんだよ」

「え? 古葉さんって、ひょっとしてここで働いていたの?」


 黒猫の真後ろには、大型ペットショップがある。


「シロの飼い主って……一体? 誰?」

「お、こっちだぞ」


 大型ペットショップの脇道を通ると、古いモルタル塗りのビルがあった。


 モルタル造りのビルは、廃墟同然の外観だった。至る所に蜘蛛の巣が張ってあって、ヒビができていた。


 だけど、ビルの中はかなり綺麗で、調度品なども高級品のように贅沢そうな作りだった。金色やエメラルドグリーン、スカイブルー、などなどの煌びやかな内装が目立った。


「お、うっわー、金かけてるんだなあ」

「うっわー、古葉さん。この金色のピカピカの女神像って、幾らくらいするのかな?」

「わかんねえ。けどなあ、きっとロクな金で買ったんじゃねえぞ。ダメだぞ。触るな。触るな」

「お、おう」


 俺はこんなところに金が入って来ること自体が、とても許せなかった。金の出所はさっぱりなんだけど、たぶん、よくないのはわかっているんだ。

 

 くっそ。弥生は、こんなところで一体何をやらされていたんだ。


 お兄ちゃん。


 とても心配してきたぞ!

 

 あの優しかった妹が……。


「お! ここじゃないか? おい! 火端! これ金庫だよ! それに、この金庫のダイヤルって、なんか怪しくね?」

「??」


 俺はこのビルの一階奥に、立て掛けてある龍の銅像の下に、古葉さんが発見した大型金庫を見た。古葉さんのところまでいくと、金の腕時計をズボンのポケットから取り出してみた。


 あれれれれ?

 よく見たら、この腕時計は止まったままだぞ。


 あー、閃いた!


 金の腕時計は三時三十分十二秒で止まってるんだ。


 だから、この場合は……。

 よーっし。


 俺は古葉さんを脇へどいてもらうと、33012のダイヤルを回した……。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート