巫女と勇気の八大地獄巡り

勇気リンリンの地獄旅
主道 学
主道 学

9-59

公開日時: 2024年8月28日(水) 09:48
更新日時: 2024年8月28日(水) 09:50
文字数:682

―――


 弥生がでてくるページの日記は終わった。


「ほらあーーー!! なあ、火端! 弥生ちゃんは優しくて良い奴だったろ! だろ!」

「……」

「なあ、火端! あら? う、泣いている……すまん!!」


 俺は涙を拭いて、広部康介の日記をびりびりに破ってしまった。

 思いっきり床にばら撒こうとしたら、窓からの風に乗って、紙吹雪となって、広部の日記はこのビル全体に舞っていった。


「なんーかっ、綺麗だよな……この紙吹雪……」

「さあ、古葉さん。用は済んだし八天街へ戻ろうよ。音星も待っているんだし!」

「あ、ああ。……この金どうするんだ?」


 大分県 別府 八天街《はってんがい》


 俺と音星は、やっと地獄巡りへと戻ることになった。

 準備をちゃんと済ませて、顔を洗って、歯を磨いて。


「なあ、弥生ちゃんを助けに行くんだろ? どうやって?」


 古葉さんが聞いて来た。

 俺と音星は顔を見合わせて、互いに首を傾げた。


「そういえば、考えてなかったな」

「火端さん。すみません。私もです」

「あのなあー」


 古葉さんはガックリしてしまった。


「まあまあ、いいじゃないか」

「そうだよ。その子は何も悪くないのだし」


 おじさんとおばさんが言ってくれているけど、違う! そうじゃないんだよ。


 俺と音星は首を無理に振って、力強く頷いてみた。


「それじゃあ、行きますよ。火端さん」

「おお」


 真夏の強い日差しの八天街の空が、真横からの眩い光で見えなくなった。それから、少しずつ目を開ける。


 と、そこは空が消え、真っ暗闇の中だった。 

 ヒュウヒュウと、風が服をなびかせて、身体の奥から、どこかから、悲しみや絶望感が湧いてくる。


「火端さん。着きましたよ」


 音星の優しい声が耳に入った。


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