巫女と勇気の八大地獄巡り

勇気リンリンの地獄旅
主道 学
主道 学

1-6

公開日時: 2024年1月20日(土) 11:51
更新日時: 2024年7月6日(土) 17:50
文字数:939

  ガタンゴトンとトロッコが、針の山をスピードを上げながら。風を切り。走り出す。

 まるで、ジェットコースターだ。

 俺たちを乗せたトロッコは、グングンと線路を猛スピードで走り抜け、右へ左へ唸るように曲がっていく。


 トロッコの車輪から火花が飛び散る。


「きゃーーー!」

「うわ! うわっ!」


 針山の側面を突っ切ってから、今度は傾斜を落下するかのように走り。それから、トロッコが徐々に登頂部分へと一直線に登っていってしまった。


「あの。火端さん? なんだか私……とても嫌な気がしてきました……」

「ああ……」


 トロッコの前に乗っている俺に、後ろにいる音星の震える声が聞こえてきた。その間に、トロッコは針山の登頂部へとたどり着いていた。


「ああ、俺もだ……なんだか……これから起きることがわかったような……」


 俺も嫌な予感がする……。


 予感が的中した! 


 トロッコはそのまま猛スピードで、針山から下方のぼっかりと開いた穴へと降りだした。


「うおおおーーー!!」

「キャーーー!!」


 これは、本物の地獄のジェットコースターだ……。

 俺は叫びながら途切れ途切れの意識でそう思った。


 真っ暗な地面に開いた穴の中は、また洞窟だった。

 猛スピードで、トロッコはそのまま洞窟を走って行く。


 更にスピードを上げだしたトロッコ。両脇には、土の壁が真っ赤に燃え盛りっていて、その高熱によって、俺は汗を大量に掻いた。


 後ろを振り向くと、音星も自分の汗をピンク色のハンカチで静かに拭っていた。


 トロッコが真っ暗闇な洞窟の奥へと走っていく。しばらくして、明かりのある出口が見えてきた。向かい風が激しさを増した。洞窟の出口までトロッコが車輪から火花を飛ばしながら、猛進する。

 俺はゾッとした。

 明かりの正体は、無数の青白い人魂だったのだ。

 

 人魂は出口の周囲を浮かんでいた。


 キュー―ーー!


 と、いきなりトロッコが急ブレーキをかけてきた。


「うっ、うお!!」


 俺は激しく左右に揺れるトロッコから、振り落とされないようにと両手をついて、足に力を入れ踏ん張った。音星は無言で俺の背中にしがみついていた。


 洞窟を抜けると、トロッコは無事に停止した。


「ふぅーー、どうやら止まってくれたようですね」


 音星が安堵の息を吐いた。

 俺は冷や汗ともども腕で拭うと、あたりを見回した。


 「あ、あれ? ここは?」   


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート