「都市ぐるみで熊を捕まえては虐待に調教、猛烈な恐怖を与えて、人を襲わせて賭けていた。悲し過ぎます」
マルは視線を尖らせる。
「次の熊さん、どうぞー」
レアが懸命に治療に専念している。
「マル、レアを手伝ってくれるか?」
「はい」
「頼んだよ」
「行くんでしょ?」
「ああ、まだ、この問題は解決していない。主宰者が居る限り、この人の過ちは続く」
「絶対に危なくなったら逃げてくださいね。助けに行きますから」
「ありがとう、マル」
マルはレアへ駆け寄った。
ジュは仲睦まじい二人を見て、ほっと頬が緩む。
「ジュの胸の中に入ってね、心音を聞きながら寝てたんだよ」
マルはレアを茶化している。
レアは訝しそうに目を細めて、ジュの顔をじーっと見る。
ジュを見つめて逸らさない。
「おいおい、誤解を招くような事を言うな」
「寝た?」
「違うよっ」
ジュは困惑しながらジェスチャーも入れて、レアをなだめようとする。
「寝たんだ」
「マル、何とか言ってくれよ」
「確かにジュの心音を子守唄にして寝てました! 無かった事にするんですか? 酷いです!」
マルはそう言って、大袈裟に泣き真似をする。
「ふんっ」
レアはぷいっとそっぽを向いた。
「困ったな」
ジュは頭を掻く。
レアは治療を再開する。
「大きなお仕事。行かないの?」
レアは冷ややかな口調でぼそっと言う。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!