橘は女性店員や機動隊の把握に意識が分散して、避けきれなかった。
ナイフが橘の左側頸部(首の左側)に当たる。
刃が橘の頸動脈に深く入り込む。
その瞬間、どくっどくっと血液が噴き出した。
心臓の鼓動に合わせて流血が脈打つ。
間も無く、全身の力が抜けて、倒れた。
犯人はナイフを落とした。
震え上がり、立ち竦んでいる。
「お前がいけないんだ!」
犯人は言う。
機動隊は無抵抗になった犯人を確保した。
無線で救急車の手配をしている。
橘の視界がぼんやりする。
周囲の騒がしい音、床から伝わる複数人の足音も次第に聞こえなくなった。
そして、僅かな光も段々と失い、完全に見えなくなった。
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