「あいよ。それじゃ合計で金貨１０枚だ」

「分かった。ほら、受け取れ」

　俺は金貨を支払った。

　それなりの出費だが、将来のライバルを育てるためと思えば安いものだ。

　俺はチンピラたちに肉を持たせる。

「親分！　領主邸に戻りますかい？」

「いや、まだだ」

　というか、親分ってなんだよ。

　俺はコイツらの師匠だと思うのだが。

　チンピラ共から親分と呼ばれると、山賊の頭領にでもなった気分になる。

「お前ら、肉だけを食べて満足するつもりか？」

「へ、へい。肉が食べられれば満足ですが……。まさか、野菜を……！？」

「そ、そんな……。せっかくの宴会なのに、野菜を合わせて食べろだなんて……」

　チンピラたちは絶望していた。

　そこまで落ち込むことなのか？

「はっはっは！　安心しろ！　野菜は最小限にしておく！！」

　素晴らしい筋肉を育てるには、第一にタンパク質だ。

　野菜類からも摂取できるが、肉類を食べるのが手っ取り早い。

　もちろんビタミン類を得るためには野菜も食べる必要があるが、肉に比べると優先度を下げてもいいだろう。

「ほ、本当ですか！？」

「さすがはおやびん！！」

　おやびん？

　せめて親分と呼べ。

　俺たちはささっと野菜を購入する。

「これで準備万端ですね！　親分！！」

「バカ野郎！　まだ足りねぇものがあるだろうが！！」

　俺はチンピラを一括する。

　筋肉を育むという意味では、大量の肉と少しの野菜があれば十分だ。

　しかし、人生を豊かにする上で外せないものがある。

「酒だっ！　酒を飲まないとか……ありえねぇだろうがっ！！」

「「おぉっ！」」

　俺の言葉に、チンピラたちが感嘆の声を上げる。

　アルコールは、筋肉に対して有益ではない。

　むしろマイナス面も大きい。

　だが、それはそれ、これはこれだ。

「行くぞぉっ！　敵は酒屋にあり！！！」

「「「うおおおおぉっ！！！」」」

　俺が先頭に立ち、チンピラたちを引き連れ、酒屋を急襲するのだった。