エミリーたち行商人一家、村の若者たち、それに捕縛した盗賊団を連れて、村まで歩いていく。
村道中に小川があったので、エミリーたちにはそこで体を清めてもらった。
盗賊たちに汚されてしまっていたからな。
そして、村に着いた。
「おおい! 村長。今戻ったぞ!」
俺はそう叫ぶ。
村の奥から、村長たちがやってきた。
フィーナや、他の村人たちもいる。
「おお。盗賊団の討伐作戦は成功したみたいだぞ!」
「すげえ! さすがはリキヤさんだ!」
「討伐するだけじゃなくて、捕縛する余裕まであるとはな! とんでもねえぜ!」
村人たちが口々にそう言う。
村の若者たちも家族や村の女性たちに囲まれて、ちょっとした英雄気分を味わっているようだ。
まあ、彼らはほぼ見学していただけだが。
俺の口からは言わないでおこう。
「リキヤさん!」
「ん? おお、フィーナ」
フィーナが俺に抱きついてくる。
俺はしっかりと受け止め、抱きしめ返す。
「心配していました。リキヤさんに万が一のことがあったらと……」
「盗賊団ごときに遅れは取らん。あくびが出るような相手だったよ」
俺はそう言う。
実際、期待していたよりもはるかに弱かった。
もっと強くないと、練習相手にもならん。
フィーナと抱擁を続けていると、村長がこちらにやってきた。
抱擁を解き、村長に向き直る。
「リキヤ殿。盗賊団の討伐作戦はうまくいったようですな。なりよりですじゃ」
「ああ。余裕があったので、ほとんどの者は殺さずに捕縛した。街へ行って、奴隷として売却するつもりだ」
ブラック盗賊団の男たちをわざわざ殺さずに捕縛したのは、もちろん温情などではない。
エミリーや彼女の母親を輪姦し、父親に暴力を振るった彼らを殺すことにためらいはない。
「それがよろしいでしょう。近いうちに、街まで案内致します」
盗賊たちを奴隷として売却することにより、今後の資金にすることができる。
また、あっさりと殺すよりも、奴隷として過酷な労働環境に置かれたほうがより苦しむことになるだろう。
俺にとっても、村にとっても、エミリーたち一家にとっても、悪くない選択だ。
「ささ、それよりも本日のところはゆっくり休まれてください。盗賊たちの見張りは私どもにお任せを」
「よろしく頼む。それと、もう1つ頼みがある」
俺はそう言って、エミリーたちを見やる。
村長も彼女たちのほうを見る。
「ふむ。彼女たちは?」
「盗賊たちにさらわれていた行商人の一家だ。馬車や高価な物品を処分されてしまったようでな。行くあてがないのだ。この村にしばらく滞在させてやってほしい」
俺はそう説明する。
「村長殿。なにとぞ、よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
エミリーの父親がそう言って頭を下げる。
母親とエミリーもそれに続く。
「わかりました。村にもあまり余裕はありませんが、他ならぬリキヤ殿の頼みです。なんとか致しましょう。先日のビッグボアの肉もまだありますしな」
村長がそう言う。
この村は、さほど裕福ではない。
よそ者3人を受け入れるとなると、そこそこの負担になる。
また、盗賊たちにも最低限の食料は必要だしな。
盗賊たちは、近いうちに街に行って奴隷として売却する。
そうすれば、彼らに費やした食料分の回収は容易だろう。
そうは言っても、直近で盗賊たちに食料を渡すことで村の者が腹を空かせるのでは不満に思う者もいることだろ
う。
「助かる。ありがとう、村長」
「いえいえ。リキヤ殿のおかげで、この村の未来は明るいです。ビッグボアは討伐され、盗賊団は一掃されましたので」
この村が困窮気味だったのは、その2つが大きな原因だ。
原因が取り除かれた以上、長い目で見ればこの村の懐事情は改善していくだろう。
「そうか。他にもできることがあれば言ってくれ。未来は明るいとは言っても、喫緊の食料事情の問題もあるだろう?」
「ありがとうございます。何かあれば、相談させていただきます」
とりあえず、今日のところはそれで解散となった。
盗賊団やエミリーたち一家のことは村長に任せ、俺はフィーナとともに彼女の家に向かう。
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