イノシシ鍋のお祭り騒ぎの翌日になった。
さらに数日後には、ブラック盗賊団の討伐作戦が実行される予定だ。
その前に、アジトの場所を聞き出しておく必要がある。
俺は、数日前に俺が捕縛した盗賊団メンバーを収容している半地下牢にやってきた。
半地下牢は村の外れに位置する。
鉄格子越しに男たちを見据え、口を開く。
「よう。元気か?」
「けっ。どの口が言いやがる。てめえさえいなければ、こんな目にも合わなかったのによ」
盗賊の1人がそう言う。
ふてぶてしい態度だ。
確かに俺がいなければ、こいつらはあのままフィーナを強姦してトンズラしていたことだろう。
もしくは、フィーナをアジトに連れ込んでお仲間と楽しんでいたかもしれない。
「終わったことはいいだろう。アジトの場所を教えてくれないか?」
「けっ。だれが教えるかよ」
男がそう答える。
もちろん、こうなることは想定内だ。
そうやすやすとは教えてくれないだろう。
「そうか。なら、仕方ないな」
俺は牢の扉を開き、中に入る。
男は手枷と足枷をされているので、逃げることはできない。
俺は男の指を掴む。
「な、なにを……? 離しやがれ」
男がビビっている。
俺を振りほどこうとするが、もちろん俺は離さない。
俺は力を込めて。
指をあらぬ方向へ折り曲げた。
ボキッ!
「ぎゃあああっ!」
男が叫び、痛みに転げ回る。
目からは涙が流れ落ちている。
「さあ、話すなら今の内だぞ。指はまだ9本あるからな。ああ、いや。足の指を入れたら19本か」
「て、てめえ……!」
「それでも足りなければ、次は歯でも抜こうか? 目でもいいぞ。お前が死ぬまで追い詰める」
「ひっ!」
男が得体の知れないものを見るような目で俺を見る。
これぐらいの拷問は、それなりによくあることだったんだがな。
「そしてお前が死ぬまで吐かなければ、今度は隣の牢のやつに同じことを繰り返すだけだ」
「「……っ!」」
隣の牢から、息を呑む音が聞こえてくる。
次は自分の番かと、恐怖を覚えているのだろう。
「お前たち全員が吐かないまま死ねば、お前たちの勝ちだと言っていい。その場合は、俺は自力でアジトを探すことになる」
少し面倒くさいので、できれば避けたいが。
別にそうなっても大きな問題はない。
敵勢力の拠点を探すぐらいのことは、何度もやってきた。
直接聞き出せたほうが確実で楽だという程度の話だ。
「吐くなら早いほうがいいぞ。骨を折るにしても、うまく加減ができんかもしれんからな。きれいに治るとは限らん。歯や目を失ったら、二度と元には戻らん」
「て、てめえ。人の心はねえのか」
「おいおい。盗賊のお前がそれを言うのか。この村の者たちから事情は聞いているぞ。ずいぶんと好き勝手やったそうじゃないか」
殺人、誘拐、強姦、強盗。
この村だけでも、ずいぶんと被害が出ている。
他の村や通行人の被害を考えると、全体の被害はもっと大きいと思われる。
被害者の言い分だけで全てを決めることはできないが、実際にこいつらはフィーナに対する強姦未遂の罪があるからな。
どうせ、前科はいくらでもあるだろう。
「なに。ちゃんとした情報を渡してくれれば、アジト殲滅後に解放も検討しよう。村人は反対するかもしれんが、こっそり解放することは可能だ」
俺はそう言う。
アメとムチだ。
厳しいばかりでは人は懐柔できない。
おとなしく吐いたときのメリットを提示しておくことによって、裏切りを助長させる。
実際に解放するかは別としてな。
「けっ。だ、だれが吐くかよ……!」
男がそう言う。
強がりだろうが、なかなか根性のある男だ。
1本目で吐くやつもそれなりにいるんだがな。
「2本目」
俺は男の指を掴み、あらぬ方向へ折り曲げた。
ボキッ!
「……! がっ……!」
男は悲鳴を押し殺す。
痛みに喚き散らさないとはな。
結構やりおる。
あと数本は折らなければならないか?
まあ、この男が吐かなくとも、まだ予備はいる。
いざとなれば自力で探せばいいだけの話だしな。
気軽に尋問を進めることにしよう。
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