ゴブリンエンペラーとやらと交戦中だ。
キングよりも少し強いが、まだまだ物足りない。
俺は再び間合いを詰めると、今度は腹に蹴りを放つ。
「グゲェェッ!!」
ゴブリンエンペラーは苦悶の表情を浮かべた。
俺はそのまま回し蹴りで頭部を狙う。
「ゴアッ!?」
ゴブリンエンペラーは慌てて腕でガードしようとするが、間に合わない。
俺の蹴りはゴブリンエンペラーの右目を潰した。
「ギィヤアアァッ!!」
ゴブリンエンペラーは耳障りな声を上げた。
「ほらどうした? かかってこい」
俺は挑発するように、手招きをする。
「ゴアアァッ!!!」
ゴブリンエンペラーは苦し紛れに再び突っ込んでくる。
「芸のない奴め」
俺は軽くステップを踏むと、ゴブリンエンペラーの攻撃を回避して、カウンターで膝裏にミドルキックを放った。
「ギャフゥッ!!」
ゴブリンエンペラーはバランスを崩す。
俺は素早く背後に移動すると、後ろから首筋に手刀を打ち込んだ。
「ウガッ!!」
ゴブリンエンペラーはそのまま地面に倒れ伏す。
だがすぐに起き上がり、洞窟の奥へと逃げていく。
まだ生きているのか。しぶとい魔物だ。
逃がさんぞ。
俺は後を追っていく。
するとそこには、大量のゴブリンの死体が転がっていた。
「これは一体……」
俺は首を傾げる。
「ギャオオォッ!!!」
死体の中心に立つゴブリンエンペラーが雄たけびをあげる。
「ふむ? これは……。生命力を吸収しているのか?」
ゴブリンの死体から発生しているエネルギーのようなものをゴブリンエンペラーが吸収していく。
今のままでは俺に勝てないと判断して、仲間を殺してパワーアップを図ったわけか。
「強さを追い求める覚悟は認めよう。だが……」
「ギャオオォッ!!!」
ゴブリンエンペラーがこちらに向かってくる。
手には巨大な剣。
この部屋に安置されていたものだろうか。
生命力の吸収と巨大な剣。
これらにより、奴は先ほどまでも一回り強くなっているはずである。
さしずめ、奥の手といったところか。
しかし……。
「その程度で、この俺を超えられると思うな」
俺は振り下ろされる剣を、片手で受け止めた。
「ふむ。粗雑な造りだが……。なぜか切れ味はいいようだな」
これも魔力や闘気とやらが関係しているのだろうか。
この世界の物理法則はまだまだ掴みきれていない。
剣を受け止めた俺の手先に、一筋の血が垂れる。
俺の鍛え抜かれた体に傷を付けるとは、大したものだ。
それがわずか1ミリにも満たない程度の浅い傷だろうとな。
「ギャオッ!?」
ゴブリンエンペラーは驚愕の声を上げる。
そして、咄嵯に距離を取ろうとする。
しかし……。
「ギャオオオォッ!?」
剣が俺の手から離れない。
一度俺に掴まれておいて、簡単に引き戻せるとは思わないことだ。
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