「……97、98、99、100! っと……」
俺は右足での、荷重付き片足スクワットを終える。
400パワーのスクワットを100回。
つまり40000パワー!
いや、左右それぞれの足でやったから、80000パワーだ!!!
俺は汗を拭いながら、スクワットを中断する。
「改めてようこそ、俺の部屋へ。お前たちは弟子入り志願者ということで良いのか?」
「……はっ? え? いや……」
男が言いよどむ。
ああ、いや……。
コイツらは襲撃者だったか。
だが、実際に見てみると、思っていた以上にいい体をしている。
見どころがありそうだ。
「なかなか鍛えているじゃないか。ん?」
「ぎゃっ!」
俺は男に近づき、太ももを触る。
なかなかに肉付きだ。
筋肉だけなら、ネネコよりも上。
Cランク冒険者の『赤い三連星』と比べても遜色ない。
「いい太ももをしているじゃないか。それで、弟子入り志願者なんだな?」
「いや、俺たちは……」
「ん?」
弟子入りではないと言うのか?
それはもったいない。
鍛えてやれば、10年後ぐらいには俺のライバルになれる可能性があるのに。
俺は思わず、男の太ももを掴む手の力を強めてしまう。
「ひぃっ! は、はい……。弟子入り志願者です……」
「おぉっ! それは素晴らしいことだ!」
俺はついテンションが上がってしまう。
元は襲撃者だろうが、こうなれば話は別だ。
しっかりと鍛えて、道を正してやろう。
健全な精神は健全な肉体に宿る!
俺がまごころを込めて鍛えてやれば、ちゃんと真っ当な生き方を見つけてくれるはずだ。
「リーダー?」
「おいおい、何を言って……」
「俺たちはそんなことのために集まったんじゃねぇぜ?」
他の者たちが何やら文句を言っているが、細かいことはいいだろう。
リーダー格の男の了承が得られたのだ。
つまり、この集団がまるごと俺に弟子入りしたと言っても過言ではない。
「ふふふ。こんなに沢山集まってくれるとは! みんな、先生がビシバシ鍛えてやるからな! 覚悟しておくといいぞ!」
「……はぁ?」
「コイツ、何を言ってるんだ?」
「イカれてやがる……」
男たちがそんなことを言う。
うん?
おかしなことを言ったかな?
俺は、自分で言うのもなんだが極めて常識人だ。
しかし、たまにはハメを外すときもある。
筋トレや戦闘時の俺は、気分がハイになって少々おかしくなることがあるのだ。
まあ、深く気にすることはない。
楽しければそれでいいだろう。
「そんなに緊張する必要はないぞ。俺がお前たちを一流に育て上げてやろう。さて……」
俺は彼らを見回し、最初のレッスン内容を考え始めたのだった。
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