ネネコとの主従契約を無事に終えた。
さて、次はどうしようか。
まずは、ネネコの身だしなみを整えるところから始めるか。
今はオンボロの服を着ているだけだし。
俺はそう思ったが……。
ぐう~。
腹の音が聞こえた。
「し、失礼しました……」
ネネコが顔を真っ赤にする。
「ふむ。腹が減っているのか?」
「は、はい……。すみません……」
「そうか。ならば、飯にするか」
「え?」
「行くぞ」
「は、はい!」
ネネコは元気よく返事をした。
俺は露店で串焼き肉を買ってやる。
以前、レオナたちに買ってやった串焼き肉だ。
彼女たちの現況もそのうち確認するつもりだが、今はネネコの件だ。
「ほら、食いな」
「よ、よろしいのですか?」
「遠慮することはない。腹が減っているのであれば、好きなだけ食うがいい」
「しかし、アタシは奴隷です……。そんな上等な肉をいただくわけには……」
上等?
そこらの露店で買っただけの肉だぞ。
味は悪くないのだが、高級肉というわけではない。
奴隷のネネコは、これまでろくな食事を与えられていなかったようだな。
「気にするな。それよりも、早く食べろ。冷めるだろう?」
「は、はい。いただきます! わぁ……」
ネネコはその小さな口で精一杯、齧り付く。
「美味いか?」
「はい……とても……こんなに美味しいものは生まれて初めてです……ぐすっ」
「泣くほどうまいのか?」
「はいっ……本当に……ありがとうございます……ぐずん」
「そうか。それは良かった」
「……はい」
その後、ネネコは泣きながら夢中でその肉を食べ続けた。
俺もいっしょに食べる。
「ふう……。満腹だ」
「ありがとうございました。この世のものとは思えないすばらしい味でした」
ネネコは大げさだな。
「もういいのか?」
「はい。たくさんいただきました」
と言いつつも、彼女はまた別の露店を見ている。
彼女の視線の先にあるのは……。
「ああ、そうか。飲み物を忘れていたな。すまない」
「いえっ。別に……」
「少し待っていてくれ。すぐに戻ってくる」
俺は再び露店に向かう。
そこで果実水を2つ購入してから、ネネコのもとに戻ってきた。
……むっ。
何やら酔っぱらいが彼女に絡んでいる。
少し目を離しただけでこれとは。
「ひっく。うぃー。獣風情が、こんな大通りで何してやがんだぁ?」
「ひ……。す、すみません」
ネネコがペコペコと頭を下げる。
「おめぇみてえな獣臭え奴がいると、みんなが迷惑なんだよぉ。獣は路地裏で這いつくばっているのがお似合いだぜぇ」
酔っぱらいはそう言って、ネネコを足蹴にしようとする。
「そこまでだ」
「あん? なんだてめえ……」
男が振り返りつつそう言うが、その言葉は途中までしか出なかった。
なぜなら、俺が男の目の前にパンチを繰り出したからだ。
寸止めだが、そこそこの迫力はあったと思う。
「俺の奴隷が粗相でもしたか? 文句があるなら俺が聞こう」
ネネコを奴隷として酷使するつもりはない。
しかし、対外的には奴隷として扱っておいた方が無難だろう。
社会の構造や価値観を変えるのは大変な労力を伴う。
俺は最強を目指すので忙しいのだ。
社会活動に時間を割いている暇はない。
まあ、戦闘だけなら喜んで首を突っ込むがな
「あ……。い、いえ……」
男は酔いが一気に醒めたようで、青ざめている。
「どうした? 文句があるのかと聞いているのだ」
俺は拳を引っ込め、代わりに男の首根っこを掴む。
「ありません……。その子は何もしていません……。すみませんでした……」
「ふん。分かったのならば、さっさと消えろ」
俺は男を無造作に投げ捨てる。
「は、はいい!!」
男は一目散に逃げていった。
やれやれ。
この国の獣人差別はなかなか深刻なようだな。
どうしたものか。
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