盗賊団のアジトに潜入し、団員たちを撃破した。
残るは、ボスだけだ。
「さて。これで、残るはお前さんだけだぜ」
「ちっ。部下どもをやってくれたな。だが俺は、そう簡単にはやられんぞ」
俺はボスと対峙する。
ボスは斧を構えている。
やはり集団の頂点に立つ男だけあって、なかなかの実力を持つようだ。
立ち姿が安定している。
「ぬあぁっ!」
ボスが斧を勢いよく振り下ろす。
こちらの位置を正確に捉えた、鋭い攻撃だ。
素人が相手であれば、この一撃で脳天を割られて終了だろう。
しかしもちろん、そんな攻撃をくらう俺ではない。
「甘いな。はあっ!」
俺はボスの攻撃をヒラリと躱す。
そして、彼のみぞおちに一撃を入れる。
「ぐうっ!? く、まだまだ!」
ボスはダメージを負ってうめくが、戦闘不能には至っていない。
なかなかのタフさだな。
多少強いくらいの男であれば、この一撃で悶絶して戦闘不能に至る。
事実、彼の配下の盗賊たちはこれと同程度のパンチで撃破してきた。
「意外とやるな。見直したぞ」
「なめてんじゃねえぞ! 鍛えてはいても気術を使えねえ素人に、俺が負けるか!」
「きじゅつ?」
ボスからの連撃を回避しながら、俺はそう聞き返す。
「ガチの素人かよ! 体の気功を開いて闘気を放出し、身体能力を向上させる技術だ! こんな山奥の村じゃ、そんな技術があることすら広まっていねえのか!」
ボスがそう説明する。
「なるほど。丁寧な説明をありがとう。お礼に、お前は殺さずにいてやるよ」
気術とやらについて、もう少し腰を据えて聞きたいしな。
とりあえず捕らえて、村でゆっくり尋問することにしよう。
「ふざけるな! 気術も使えねえやつに俺が負けるか! 死ねや!」
ボスがそう言って、力強い一撃を繰り出してくる。
何やら、彼の体からオーラのようなものが出ているように見える。
これが、気術とやらか。
確かに先ほどまでの攻撃よりも、数段は威力が上がっているようだ。
しかしーー。
「せえぃっ!」
「ぐああっ!」
俺の反撃で、ボスは大ダメージを受ける。
彼が地面に倒れ込む。
「興味深い技だが、使い手がお前程度ではな。もともとの実力の差がありすぎる」
「ちっ。ク、クソが……」
ボスはそう言って、気を失った。
これにて、ブラック盗賊団の討伐作戦は完了だ。
「おおい! 野郎ども。もう終わったぞ」
少し離れたところで待機している村の若い男たちに向けて、俺はそう声を掛ける。
「す、すげえぜ! リキヤの兄貴!」
「ああ! まさか1人で20人以上の盗賊をぶっ飛ばしちまうとはな!」
「それに、あの悪名高いダーヒル頭領もまるで相手になっていなかったぜ!」
「「「兄貴! 兄貴!」」」
男たちは、何やらテンションが上がっているようだ。
散々村を苦しめていた盗賊が粉砕されたので、当然か。
あとは、俺の戦闘を見て憧れてくれているのかもしれない。
その憧れを糧に、成長していってほしいところだ。
そして、ゆくゆくは俺のライバルになれ。
「よし。盗賊たちの身柄を拘束して、村に連れ帰るぞ」
「了解しやした。物品の回収はどうしやすか?」
「とりあえず後回しだ。後日改めて回収に来よう」
俺たちはさっそく、盗賊たちを捕縛していく。
何人かは、俺の手加減が足りずに死亡していたようだ。
まあ、悪人のようだったしどうでもいいが。
奴隷として売り払ったときの金が減るのは少しだけ残念だな。
そんなことを考えつつ、捕縛作業を進めていく。
生き残り全員の捕縛が完了した。
「リキヤの兄貴。さっそく村に帰りやしょう」
「ああ。だが、その前に1つ確認が必要なことがある」
「なんでございやしょう?」
「どうやら、さらわれた女性がアジトに捕らわれているようだ。もう少し奥に行ったところにいるかもしれん。俺が様子を見てくるので、お前たちは盗賊たちを見張っていろ」
ほら穴の中を進んできたが、ここまでで女性の声は聞こえなかった。
それらしい分かれ道もなかったしな。
捕らわれの女性がいるとすれば、ここよりさらに奥だろう。
俺はこの場を村の男たちに任せて、アジトの奥に向かって進み始めた。
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