ゴブリンエンペラーと交戦中だ。
奴から振り下ろされた剣を俺が受け止めた。
必死に剣を引き戻そうとしてくるが、俺に力負けしている。
「ほらほら。片手の俺に力負けするのか?」
「ゴアアァッ!!」
ゴブリンエンペラーは必死の形相で剣を引っ張る。
俺はふっと力を抜く。
ゴブリンエンペラーの体勢が崩れたところで再び力を入れ、剣を奴の手から奪取した。
「悪くない剣のようだな。これは俺が研究のためにいただいてやろう」
「ギャオアッ!?」
ゴブリンエンペラーは絶望的な表情を浮かべた。
「さあ、そろそろ終わりだ」
俺はゴブリンエンペラーの胸に拳を叩き込む。
ドガアァンッ!!
轟音とともに、ゴブリンエンペラーは吹き飛んだ。
洞窟の壁に激突し、磔になる。
「最後は自分の剣で止めを刺してやる」
ヒュッ!
俺は奪った剣を投擲する。
音速を超えた刃は、ゴブリンエンペラーの首に突き立った。
「ゴアアァッ!! アアァ……」
断末魔の叫びを上げ、ゴブリンエンペラーは絶命した。
「ふむ。こんなところだろう。次はもう少し強い奴と戦ってみたいものだ」
俺はそう呟きながら、ゴブリンエンペラーの死体に近寄る。
こいつの剣撃は俺の手先に若干の傷をつけた。
この異世界に来てから、一番の強敵だったと言ってもいいだろう。
いい運動になった。
冒険者としてランクを上げていけば、もっと強い魔物と戦う機会があるかもしれないな。
そのためにも、まずはこいつを街まで持ち帰るべきだろう。
俺はゴブリンエンペラーの死体を担ぎ上げる。
ついでに、ゴブリンキングの死体も合わせて持ち上げる。
右肩にキング、左肩にエンペラーだ。
「よしっ!」
そのまま、俺は洞窟を出る。
ちょうど、三馬鹿がこの洞窟に入ろうとしているところだったようだ。
「おう。遅かったな。こいつはもう倒したぞ」
俺はそう言って、ゴブリンエンペラーとゴブリンキングの死体を一度地面に置く。
「なっ!? バ、バカな……」
「嘘だろ!?」
「そんなことが、ありえるはずがねえッ!!」
三人は目を丸くしている。
「お前らが騒ぐ割には、大したことがない相手だった。まあ、ゴブリンキングよりは、こっちのエンペラーの方が少しだけ強かったが」
俺は淡々と事実を告げる。
「なん……だと……」
「信じられん……」
「ありえない……」
「ああ、後はこの剣も気に入った。ゴブリンエンペラーが使っていたものだが。俺がもらっても構わないな?」
俺はゴブリンエンペラーが持っていた剣をかざしてそう言う。
「お、おう……」
モヒカンがなぜかドン引きした様子でそう言う。
やれやれ。
ゴブリンエンペラーとやらを倒しただけで、大げさな奴である。
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