ゴブリンキングとゴブリンエンペラーを倒した翌日からも、俺はよく活動した。
だが、やはりあの程度でも強い方ではあったようだ。
なかなかあれ以上の強敵とは出会えない。
俺はそんなことを考えながら、朝の身支度を済ませていく。
「あへえ……。リキヤさん、相変わらず凄すぎですぅ……」
ベッドで横になっているエミリーが、満足顔で痙攣している。
俺は彼女と、定期的に夜を共にしている。
もちろん、近況も互いに報告している。
彼女たち一家は、無事にこの街で定職に就いたそうだ。
もう俺がいなくてもやっていけるだろう。
そして、俺が先日得た大金の一部を援助金として渡してやった。
エミリーたちはしきりに遠慮していたが、半ば強引に押しつけた形になる。
「エミリー。愛しているぞ」
「あふぅ……。私もです、リキヤさん……」
エミリーがとろけるような表情でそう言う。
「よし。そろそろ行くとするかな」
彼女と朝からおっ始めるのも悪くはないが、あまり自堕落な生活を続けるわけにもいかない。
「はいぃ。行ってらっしゃいです~」
「ああ。行ってくる」
こうして、俺は宿を出た。
「さて。今日は何をするか」
冒険者ギルドに顔を出すのもいい。
しかし、ここ最近はめぼしい依頼がない。
俺が片っ端から受注して達成していったからな。
もう少し機を待った方がいいかもしれない。
他の街に移るのもありだが、エミリーと離れるのは少し後ろ髪が引かれる。
それに、孤児院の少女レオナの近況も気になるし、三馬鹿を鍛えてやる話を具体的に進めるのもありだ。
まだこの街を離れるには早いだろう。
「うーむ。何から手をつけたものか」
などと考えつつ、大通りを歩いていると……。
「聞き分けの悪い獣人がぁ! ぶち殺すぞ!!」
怒声が聞こえてきた。
少し離れた路地裏の方からだ。
別に無視してもいいのだが、何か刺激的な事件の匂いも感じる。
俺は声がした方に向かう。
ちょっとした障害物があったが、難なく飛び越えて先へ進む。
すると、数人の男たちが一人の少女を取り囲んでいた。
「いやぁ……。だ、誰か助けてぇ!!」
少女がそう叫ぶ。
背丈は俺の半分くらいだろうか。
茶色の髪をしていて、頭に猫耳がついている。
猫獣人というやつか。
「へへへ。こんな路地裏に、誰も来ねえよ!」
「来たとしても、正当性は俺たちにあるからなあ!」
「獣の奴隷なんざ、気にかける奴はいねえよ!」
男たちが口々にそう言う。
奴隷か。
……ん?
あの少女は、どこかで見覚えがあるな。
ええと。
俺がフィーナの村で捕らえた盗賊たちを奴隷商館に売り払いに行ったときか。
あのときも、何やら折檻を受けて部屋から逃げようとしている様子だった。
獣人は、この街において相当に地位が低いらしい。
俺は最強を目指している。
俺にとって、この世界やこの国がどのような人権意識を持っていてどのような施策を敷いているかなど、どうでもいいことだ。
だがそれはそれとして、争い事に首を突っ込むのはやぶさかではない。
ここはひとつ、この連中の実力を見てやるとするか。
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