冒険者ギルドにて、ゴブリンの巣の殲滅を計画しているところだ。
受付嬢が心配げに俺を止めていたとき、背後から三人組の下品な声が聞こえた。
俺は振り向く。
3人組のチンピラがそこに立っていた。
どこかで見覚えのある顔だ。
「またお前らか。確か、”赤い三馬鹿”だったか」
「違う! ”赤い三連星”だ!」
リーダー格の男がそう叫ぶ。
「そっちの方が覚えにくいな。とにかく、同じことだ」
「同じじゃねえ! ……まあいい。そんなことより、ゴブリンの件だ」
リーダー格の男の髪型はモヒカンだ。
これからはモヒカンと呼ぼう。
「ああ。ちょうどいいところに来たな。今日……はもう遅いか。明日にでも行くつもりだったんだ」
俺の言葉を聞いた3人の表情が険しくなる。
「正気か? ゴブリンに殺される可能性が高いぞ」
「ほう……。俺の実力を忘れたのか? またボコボコにされたいようだな」
俺はニヤリと笑う。
指をボキボキと鳴らし、三馬鹿に近づいていく。
「ま、待て! そういう意味じゃねえよ!」
「ふむ? 実力不足という意味でなければ、どういう意味なんだ?」
「ゴブリンの巣は、当然やつらに地の利がある。そこで囲まれたら、いくら個人の実力が秀でていても限界があるってことだ!」
モヒカンがそう叫ぶ。
「なるほど。一理なくもないな」
ゴブリンは弱い。
あの程度に囲まれたとしても、俺が負けることがないように思う。
しかし、油断は禁物だ。
自分に自信を持つことと、相手を侮り油断することは異なる。
それに、警戒することと弱気なことも異なる。
ここは俺が知らない異世界で、ゴブリンという生物もこの世界に来て初めて知った。
まだまだ生態系や戦闘能力を把握できていない面がある。
特定の地形で動きがよくなるとか、ゴブリン内でも多少の個体差があるとか。
もしかすると、弓や魔法を使用するゴブリンすら存在する可能性はある。
俺がそういう情報に疎い点を踏まえれば、三馬鹿の意見を聞く価値はあるだろう。
「そうだろ? だから、俺たちと一緒に行こうぜ?」
「いいだろう。特別に許可してやる」
俺にとってこいつらはザコだが、一応はCランク冒険者として中堅上位の実力を持つらしい。
ゴブリンの生態系を把握して確実に殲滅するために、いて困るわけでもないだろう。
俺1人でも99パーセントは問題ないと思うが、こいつらが同行することで99.1パーセントの成功率となるイメージだ。
「おおっ! オッサン! 話がわかるじゃねえか!」
「ギャハハハハ! これでゴブリンどもを皆殺しにできる!」
「荒稼ぎしてやるぜ!」
こうして、俺は赤い三連星とともにゴブリンの巣へと向かうことになったのだった。
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