孤児のレオナたちに串焼きをご馳走しているところだ。
「おいしいねえ……!」
「はぐはぐはぐ!」
レオナや男の子たちが満足そうに食べ進めていく。
この調子だと、10本以上買っておいた串焼きもあっという間になくなりそうだ。
俺はそう思ったが、実際にはそうならなかった。
子どもたちがそれぞれ1本目を食べ終えたところで、手が止まる。
「どうした? 2本目も食べていいんだぞ?」
「……あの。できれば、持ち帰ってもよろしいでしょうか? 孤児院には、他にもお腹を空かせた子がたくさんいるのです……」
レオナが恐る恐るといった感じでそう言う。
なるほど。
確かに、今この場にいる者が孤児の全員なわけがないか。
「わかった。好きにするといい。……では、そろそろ行こうか。エミリー」
「はいっ!」
エミリーが元気よくそう返事をする。
「……え? あの、私たちにしてほしいことの件は……」
レオナがそう言う。
「その件は、またいずれ話すさ。そう急ぐことでもない」
元気になった孤児たちを鍛えて、俺の将来のライバルを育て上げるのだ。
数年以上の月日が必要となるだろう。
1日単位で急ぐほどの用件ではない。
「わかりました。必ずや、期待に応えてみせますので」
「「おじちゃんたち、バイバーイ!」」
「ああ。またな」
俺とエミリーはレオナたちと別れを告げ、歩き出す。
孤児院には腹を空かせた者が他にもいるそうだし、近いうちにまた食料を持っていってやるか。
リトルボアの1匹でも狩れば、子どもたちが腹いっぱいに食べることも可能だろう。
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レオナたちと別れ、しばらく歩く。
そろそろ、夕暮れが近い。
エミリーとの街の散策も、そろそろ切り上げだ。
最後に、宿屋の場所に案内してもらっている。
「ここが私たちのオススメの宿屋です。おそらく、私と両親もしばらくはここに泊まることになるかと思います」
エミリーたち一家は、行商人だ。
定まった家を持たない。
しかし、盗賊団に襲われた件の影響で、街を拠点に活動する予定だと聞いている。
「わかった。今後も会う機会はあるだろうな」
もちろん俺もまだ定まった家を持たない。
しばらくは宿屋暮らしだ。
まとまった金が手に入れば、一軒家を借りたり購入したりするのもいい。
エミリーたちも、似たような感じだろう。
ずっと宿屋だと、宿泊費がかさんでくるからな。
俺とエミリーは宿屋に入る。
店員に『1人での宿泊』だと告げ、代金を支払う。
2階の部屋に案内される。
エミリーも付いてきているが、店員は1階に戻った。
今この部屋には、俺とエミリーの2人きりだ。
「いろいろと世話になったな」
俺はエミリーにそうお礼を言う。
「いえ。お世話になったのはこちらのほうです。リキヤさんにはとっても感謝しています。言ってくれれば、何でもしますから」
エミリーがそう言う。
何でも、か。
俺は彼女の耳元に口を近づける。
「ふっ。エミリーがいいのであれば、俺は大歓迎だぞ。いつでもこの部屋に来るといい」
「はうっ! か、考えときます~!」
エミリーは真っ赤な顔をして、部屋を飛び出していった。
この調子だと、彼女の肉体を味わう日も近いかもしれない。
強者との戦いは楽しみだが、それはそれとして女性との交わりやうまいものを食うことも楽しみだ。
この世界を謳歌させてもらうことにしよう。
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