少女を囲んでいた男たちを一蹴した。
俺は少女に向き直る。
「おい、大丈夫か?」
「ひっ……。あ、ありがとうございます!」
俺が声をかけると、怯えながらもぺこりと頭を下げる。
「脅える必要はない。俺はリキヤだ。お前の名前を教えてもらえるか?」
「ア、アタシの名前ですか……? ネ、ネネコと言います!」
「ネネネコか。いい名前だ」
少し言いにくいが、噛まずに言えるようにがんばろう。
俺は舌や口も鍛えている。
この程度は造作もない。
「い、いえ。ネネコです。ネネコ」
「ネネコか。それで、お前はどうして奴隷なんかにされているんだ? 何か悪いことをしたのか? それとも、親の借金のカタにでもされたか?」
「ち、違います! ただ、里のみんなと平和に暮らしていただけです! それがある日突然……。父さんも母さんも、兄ちゃんたちも、さらわれちゃいました」
「ほう」
それは、穏やかじゃないな。
「人さらいということか」
「はい! そうなんです! ……あ、あの……、お願いします。助けてください。アタシ、なんでもしますので!」
そう言って、地面に頭をこすりつけるようにして土下座する。
「わかった。引き受けよう」
俺は即答した。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。俺は最強を目指している。そして、強くなるためには弱者を助けることも必要だと考えている。さらに言えば、お前にはキラリと輝く才能を感じる」
獣人というだけあって、身体能力は高そうだ。
鍛えてやれば、普通の人間にはできないような動きも可能だろう。
「あ……あ……。ありがとうございますっ!!」
少女……ネネコが感極まったような表情で涙を流す。
よっぽどひどい目に遭わされていたのだろう。
「任せておけ。必ず家族のもとに帰してやる。俺に任せておけば、すべてうまくいくぞ」
俺は自信満々に言った。
これは、俺自身への言葉でもあるのだ。
俺は弱い者を助け、強い者は倒す。
そうすることで、より強くなれる。
「あぁ、神様……」
ネネコはそう呟きながら、祈りを捧げるように手を胸の前で組んだ。
「俺は神ではないぞ。だが……」
俺はネネコの背後を見やる。
このやり取りをしている間に、四人の男が復活している。
まあ、体の節々を押さえて傷ついた様子ではあるが。
「とりあえず、あいつらはどうにかしてやろう」
「えっ」
ネネコが驚きの声を上げる。
「安心しろ。俺のそばにいる限り、お前には傷一つ負わせない」
「は、はい……」
俺の言葉を聞き、ネネコはぽっと頬を赤らめる。
「よし。では、そこで待っていろ」
「はい!!」
ネネコが大きくうなずくのを確認してから、男たちの方に向き直る。
男たちは、俺をにらんでいる。
この程度の奴らなど、武力で一蹴できるのは先ほどの通りだが……。
一応は、この国における正当な所有権を持っているというような話だったな。
話をしてやることにするか。
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