「へいへい! 俺たちを誰だと思ってやがる!!」
「嬢ちゃん、今の俺たちは機嫌がいいんだ! 今すぐに逃げるなら、特別に追わないでやるぜ?」
「それでも向かってくるって言うなら――ぷぎゃっ!?」
「ごふぅっ!?」
無事だったチンピラも、あっさりと倒された。
筋トレで疲れていた上、肉や酒樽などを担いでおり行動が阻害されていたこともあるだろう。
だが、それでもそれなりには強い奴らだった。
相手はなかなかの腕利きのようだ。
1人だけ無事な俺は、襲撃者に視線を向ける。
暗くて見えにくいが、本当に小さな少女だ。
「どういうつもりだ? コイツらに恨みでも?」
俺はそう問いかける。
コイツらの性根は、今後叩き直していく予定だった。
だが、過去の罪は消えない。
コイツらに恨みを持っている襲撃者であれば、事情くらいは聞いておくべきだろう。
「アタシは、コイツらに恨みなんてありません」
「ふむ? ならばどうしてこんなことを?」
俺は再度問いかける。
どこかで聞いたことのある声だが、よく思い出せない。
「街の人たちから悪評を聞いたのです。コイツらなら、ぶちのめしても構わないでしょう」
「なるほど。正義の味方というわけか」
チンピラ共は、領主と繋がっている。
冒険者ギルドや衛兵などから大々的にお尋ね者になってはいないはずだが、街の人々からの評判は最悪だ。
「正義の味方は結構だが、報酬などは出ないだろう? それに、報復もされるかもしれない。安易な正義感でそんなことをしているのであれば、感心しないな」
「いえ、アタシは正義感など持っていません。ましてや、お金にもそれほど興味はありません」
「ほう?」
正義感や金銭が行動原理でないならば、何が目的なのか。
俺には思いつかなかった。
「ただ単純に、強くなりたいのです」
「ふはっ!!」
その言葉を聞いて、思わず笑ってしまった。
単純明快だ。
実に分かりやすい理由である。
「ご主人様に褒めていただけるように、アタシは強くなります! あなたにも、その踏み台になっていただきます!!」
「いいだろう! 掛かってくるがいい!!」
こうして、俺は少女と戦うことになったのだった。
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