「「「おおおおぉっ!!!」」」
俺はチンピラたちを引き連れ、街を駆けていく。
何も、どこかを襲撃しようというわけじゃない。
領主邸の応接室を借りて宴会をするにあたり、買い出しにやってきただけだ。
しかし、心なしか人々が怯えた目をしている気がする。
「お、おい。あいつらは……」
「クソ領主のところの奴らだよな?」
「バカ野郎! 滅多なことを言うんじゃねぇ! 領主……様の耳に届いたらどうなることか……」
「しかし、あの先頭の男は誰だ?」
「知らねぇのか? 最近有名な冒険者だよ」
「くっ! 領主め……。期待のルーキーまでも配下にしちまったようだぜ」
「くそぅ……」
すれ違う街の人たちが、そんなことを言っていた。
どうやら、領主はかなり評判が悪いらしい。
俺が連れているこのチンピラ共も、街の人から相当に嫌われているようだ。
とはいえ、俺が鍛えてやれば、改心することもあるだろう。
健全な精神は健全な肉体に宿るとも言うしな。
とりあえず、今大切なのは買い出しだ。
「はっはぁ! ここが俺の行きつけの肉屋だぁ~!!」
俺は一軒のお店にやって来た。
筋骨隆々のおっさんが店主を務める、精肉店である。
「「「おおおおぉっ!!!」」」
チンピラたちが雄叫びを上げる。
筋トレ後の疲れ切った状態で美味そうな肉を目にして、興奮している様子だ。
「な、なんだお前らはっ!? ご、強盗か!?」
筋骨隆々とした店主のオッサンだが、さすらに怯んでいる。
俺の後ろからは、チンピラがゾロゾロとついてきているのだ。
普通なら、こういう反応になる。
「まあまあ、落ち着いてくれよ。ほら、俺だよ、俺」
オレオレ詐欺みたいになっているが、もちろんそうではない。
「あ、ああ……。よく見りゃ、リキヤさんかい。後ろのそいつらは?」
「こいつらは俺の舎弟だ。つい先ほど弟子入りを認めた。その祝いに、美味い肉を食わせてやろうと思ってな。ここに買いに来たわけだ」
「ははは。そいつは豪気なことだねぇ……。で、どの肉にするんだ?」
「そうだな……。いつも食べているその部位を10キロ。その他の部位を適当に10キロほど頼む」
俺とチンピラたちで、合計10人以上いる。
俺はもちろんたくさん食べるし、チンピラたちもそれなり食べるだろう。
むしろ、無理やりにでも食べさせる。
食べることもトレーニングの内だからな。
メイドのサキも宴会には参加するし、その他飛び入り参加者が来る可能性もある。
肉はたくさん買っておくべきだ。
俺はそのようなことを考えたのだった。
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