2RE:play〜ふたりプレイ〜

世界で最後のゲーム実況者
ハラアイ
ハラアイ

【home公式放送】話題のやばいゲームを実況プレイ3【配信】

公開日時: 2021年1月2日(土) 23:05
更新日時: 2021年1月3日(日) 03:45
文字数:4,648

コトリ:あー、あーーーー、はいこんばんわ、コトリです。生きとし生けるもの達よ、今日も生きていますか? こんばんわーーー



***:うるさい

***:相変わらずの音量

***:うるさいぞ!

***:うるさ



コトリ:うるさいのくだり、もうネタになってるな? 音量だいぶ下げてるから、俺は騙されませんからね! はい、本日も呪いの時間がやって参りました。『YOU』home公式放送のお時間です! あ、みんな、「さえずりシミュレーター」観てくれた? ……そうそう、あの家守さんが俺のことを監視してくれてます! 頼もしいよね



***:家守さん冷たくて面白かった

***:良いコラボ!

***:家守さん喋って欲しい

***:このコメントの中にいないかな?



コトリ:はい、家守さん、人気者ですよ! 気が向いたらコメントしてくださいねー。ってことで、早速ゲームをはじめていきますか。今日はじめて来た人もいるかな? 一応、ここまでの『YOU』のあらすじを言うと……



***:丁寧!

***:ありがとー



コトリ:まずこのゲームの主人公、【さえずるコトリ】はおそらく上流階級の家の息子で、お受験ママパパ、そして成績優秀な兄とともに暮らしていました。が、高校受験失敗。「あなたなんて私たちの子供じゃない」と、家では存在しない者として扱われているようです。で、彼はどうしたかというと……ネットゲームにハマりました。寂しかったんでしょうね。やりこみすぎ、レベルが強くなりすぎて、最初はヒーロー扱いだったのが、嫉みによるネットのカキコミによって、今度は馬鹿にされ始めます。ネット上でも、のけ者扱いされたところで……



***:『speak』!

***:スピークさん!



コトリ:そう、『speak』という人物だけが【コトリ】に味方します。どうして味方をしてくれるのか、【コトリ】がそう問うと、『speak』は「あなたがはじめて私に足跡を残してくれた」と語ります。足跡って言うのは、この動画サイトの『ヨイネ』ボタンみたいなものですね。つまり、コトリは知らず知らずのうちに、『speak』に接触していたわけなんだけど……



***:part1に『speak』いたよ

***:いた! 白衣のアバターの女の子



コトリ:そう、part1に、すでに『speak』が居たらしいんですよ! 俺もコメントもらって気づいたんだけどさ……たしかに、最初に『YOU』をプレイしたとき、コトリが足跡を残したのがこの『speak』っていうアバターだったんだよね。いやぁ、伏線があったんだね。ま、そんなわけで、彼女が「あなたが私に最初に足跡を残してくれた」「うれしかった」と語ったところでね……俺の機材がまたまたフリーズしました



***:タイミング悪すぎ!

***:めちゃくちゃいいところだったのに……

***:スピーク&フリーズ

***:大丈夫? 機材、壊れてない?



コトリ:機材は大丈夫! 今日はうまく動くはず……だよね? 信じてて。さて、おさらいはこのくらいで大丈夫かな? では、そろそろ始めます。呪われたゲーム『YOU』part3、スタート!




*プレイヤー操作 ~つづきから~


*暗い部屋の中央にいるコトリ

*左半分にパソコンの画面が表示される

*フリーのチャットソフトが立ち上がる



speak》コトリ、いる?



***:speakの連絡先ゲットしたの!?

***:speakさんと恋仲に……!?

***:はいアウト

​***:警察呼んでー家守さん!



コトリ:いやいや待って待って! 落ち着いて! 女の子の個人アドレスゲットだけではしゃぎすぎだぞお前ら!





コトリ》いるよ

speak》最近、『ゾンウィズ』にログインしてないね

コトリ》もう飽きたし

speak》そう……

コトリ》俺の居場所も、もうないし

speak》そんなことないよ

コトリ》いいよ、本当のことだから

speak》一緒に新しいゲームやる?

コトリ》いいよ、君はまだゾンウィズのアカウント生きてるでしょ

speak》コトリと一緒じゃなきゃ意味ないよ

コトリ》不思議なんだけどさ、なんで俺なんかにこんなに懐いてるわけ? 





コトリ:んん……? これは、つきあってる訳ではないのか……



***:だよね

***:だってコトリンだもん、彼女出来るわけない



コトリ:おーい、失礼なコメント拾ってくぞ俺は。っていうか、このゲームの主人公は俺じゃないからね! 俺の名前借りてるだけだから





コトリ》いくら最初に君に接触したからって、こんなに……

speak》だって生まれて初めてだったから

コトリ》はじめて?

speak》誰かに認識してもらえたの

コトリ》大げさすぎる

speak》大げさじゃないよ。初めてだった。今まで誰も私の存在なんて気づいてくれなかった

コトリ》家族とかいるだろ

speak》いるけど、いない

コトリ》どういうこと

speak》いるけど、私のことなんて、お母さんにとっては存在しないも同じ

コトリ》お父さんとか、姉弟は

speak》いない。だから、あなたがはじめて私を意識してくれたの

コトリ》……あんなの、ほんとうに足跡をつけただけだよ。逆。

speak》どういうこと?

コトリ》手当たり次第、足跡つけてただけ。あのとき、俺もレベル弱かったから。みんなに知ってもらうために、アバター見つけ次第、足跡残してたんだ。君を認識したとか、そんなんじゃない。俺を知ってもらうために、つけただけだ



***:正直だ

***:いるよね、足跡ヨイネしてくる奴

***:わかるわかる。内容読んでないだろって思う



コトリ:あー……まあいるよね、うん……俺も覚えがある。やったことも、やられたことも。心臓が痛くなるなぁ、このゲーム




コトリ》わかった? 俺は君にとって特別じゃないし、君は俺にとって特別じゃない

speak》……でも、似たもの同士だね

コトリ》何が

speak》そうやって手当たり次第足跡をつけてたのは、君も、寂しかったからでしょ



*長い間、チャット欄は動かない

*カーソルの点滅だけがしばらく続く

*しばらくして、カチカチカチという音と共に、言葉が打ち込まれる



コトリ》実は俺も、初めて認識してもらえた

コトリ》初めて、存在を認められた気がした




*しばらくの間

*カチカチカチという音と共に、再び言葉が打ち込まれる



コトリ》怖かったんだ、君のことが。こんなこと、はじめてだったから

コトリ》君が、実際の人間じゃないんじゃないかって

コトリ》ただのプログラムだったら、どうしようかって

speak》わたしは人間だよ

コトリ》信じられない

speak》電話でもする?

コトリ》音声だって、信じられない

speak》どうして?

コトリ》俺の両親の会社、そういうAIとかプログラム開発してるから

speak》そうなんだ。私の母親と似てる

コトリ》え?

speak》科学者なんだ。人間の脳の構造をコンピューターに変換して、精度の高いNPCみたいなものを作ってる

コトリ》ますます信じられない

speak》でも、私は人間だから。証明するよ

コトリ》どうやって

speak》会いに行く



***:!?!?!?!?

***:オフ会じゃん

***:ついにコトリン顔バレ!



コトリ:いやだからこれ俺じゃないってば! しかし、あれ、これ何ゲームなんだ本当に……前回までホラーっぽかったのに、今恋愛シュミレーションみたいになってない?




コトリ》そんな急に?

speak》うん

コトリ》怖くないの。知らない人に会うの

speak》少しは、怖いけど

speak》じゃあ、コトリのこと教えてくれる?

コトリ》教えることなんて、ないよ。たいした人生送ってきてない

speak》私も、あんまり教えることないや

コトリ》だよな

speak》じゃあさ、いいこと思いついた

コトリ》なに?

speak》ちょっとしたお遊びなんだけどさ、こんなの、どう?


*チャット画面が消える

*コトリの部屋のテレビの画面が点滅する

*ノイズ音





コトリ:え? なに、今度は……





*ニュース番組のジングルが流れる



アナウンサー「午後のニュースです。本日、***市のライブハウスにて、暴動が発生しました。警察は現在、原因を捜査中です」


アナウンサー「夜のニュースです。***市のライブハウスにて発生した暴動は、隣の***市、***市まで広がっています」


アナウンサー「朝のニュースです。***市のライブハウスにて発生した暴動について、政府は『暴動ではない』と結論付けました」





コトリ:え、ちょっとまって、これってまさか





アナウンサー「お昼のニュースです。***市のライブハウスにて発生した暴動について、政府は『原因不明の伝染病、もしくは集団幻覚症状の恐れがある』と発表しました」



***:え

***:は?

***:嘘、なんで



アナウンサー「緊急ニュースです。***市のライブハウスにて発生した暴動について、政府は『感染者に接触すると、症状が伝染する危険性がある』と発表しました」


アナウンサー「全国のみなさん、『声』です」


アナウンサー「感染者の出す『声』を聴くと、症状が伝染するとの情報が入りました。繰り返します、危険なのは接触そのものではなく、『声』です……





***:すごい、時事ネタじゃん

***:アップデート入ったの?

***:現実と同じじゃん、これ……





アナウンサー「警告です。正常者のみなさんは、家から出ないでください。不要不急の外出は控えてください。繰り返します。正常者のみなさんは、家から出ないでください。不要不急の外出は控えてください。病む終えず外出する際は、必ずイヤフォン・ヘッドフォンをして、外部の音を絶対に聴かないでください。繰り返します……」




*チャット画面が再び表示される



<speak>がアドレスを送りました


speak》……これで、コトリのこと教えてよ

コトリ》これは?

speak》「home」っていう作品投稿サイト





コトリ:……え?





*コトリ、アドレスをクリック

*「home」のトップページが開く



homeへようこそ!


私たちは今、

人類滅亡の危機に直面しています。

「声」による感染によって、

私たちは「言葉」を失いました。

そしてそれによって作られる

文化や芸術までもが、

この世界から消えてしまうかもしれません。

しかしもはや芸術は、創作は、

人間には絶対に必要なもの。

私たちは未来のために、

未来の我々人類のために、

このすばらしい創作の場所を残します。




ここはホーム。

みんながいつか帰る場所。
















おもい だ せ












***:とまった

***:まただ! 家守さん!

***:ちょっと、怖い

***:画面フリーズきた!

***:コトリン……??

***:コトリ、外でてないよね? 危ないよ

***:ちょっと、このゲーム怖い

***:こわいこわこわいくぉあい



コトリ:……えっとー、生きてます



***:良かった

***:大丈夫?

***:雰囲気やばいねこのゲーム

***:なんか変じゃない?



コトリ:またフリーズだ……おかしいな、何なんだろう



***:演出?

***:『YOU』ってこんなゲームなの??

***:不謹慎じゃない? こんなリアルな現実反映するなんて



♪ =home公式メッセージが受信されました=



***:メッセージきた!

***:流石にちょっと展開がヤバいから家守さんかな?

***:盛り上がってきた

***:どうなるの、これ……



コトリ:ちょっと、本日はここまでにしよっか。なかなかセンシティブな内容だったね、このゲーム……消されないか不安なんだけど。あ、メールは家守さんからでした。ちょっと、お話してきます



***:その方が良い

***:うん、いってらっしゃい

***:大丈夫かな……



<このライブ放送は終了しました>


*このテキストは、フィクションです

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