Nostalgia

ヴィクトリア朝蒸気機関譚
大塚已愛
大塚已愛

※第五章時点での登場人物紹介

公開日時: 2021年3月13日(土) 18:10
更新日時: 2021年3月13日(土) 18:36
文字数:3,384

前回で五章終了ということで、五章時点でのキャラクター設定などを公開しました。

五章までのネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

メアリ・ジズ。


AGE:十七(推定) 性別:女 一八七八年生まれ(推定)

家族:六年前父と死別。母はメアリを産んだ後で死亡。母方の祖父は千夜鶏鳴結社の長、モーリス・デーナ卿(故人)。


身長:155cmくらい? この当時の平均より小柄。胸は無い。


好きなもの:甘いお菓子 動物 ハッピーエンドの物語

嫌いなもの:辛いもの 理不尽で悲劇的な結末の物語

宝物:

趣味:読書

特技:計算


 計算手の少女。命の冠の乙女。

 性格はおっとり穏やか。普通の明るい女の子であるが、心の闇はものすごく深い。だが、それをおくびにも出さないくらいには思慮深いというか狡猾。


 共感覚能力者で、音に数字、色を感じることが出来る。


 西方学派を復活させ、『独自の方法で』人を救済しようとする秘密結社『千夜鶏鳴結社』の長の孫娘。胎児の折、千夜鶏鳴結社が1800年代前半より行ってきた実験の集大成『命の冠の少女』として誕生する。



 ウィリアム


AGE:? 外見年齢は二〇代前半 

性別:男性型 

家族:同型という意味ではエルドレッド

身長:一八〇センチ後半


好きなもの:メアリ 静かなこと

嫌いなもの:ラーゼス 痛いこと全般 うるさいこと全般

宝物:自分の魂(メアリがくれた物だから)

趣味:読書

特技:方法を教えて貰えば何でも出来ること。料理だろうがスポーツだろうが、何でも完璧に出来る


 西方学派の遺産の自動人形。

 魂が無いため、製造されてから希薄な意識しかなかったが、メアリの産声に反応し、自我を得る。脳部分は生命金属で出来ており、メアリの歌により計算で急速に成長させられた為、精神的にやや平坦。


 14世紀、オックスフォード大学のブラッドワーディーンは数学を使って無限の空間に於ける神の存在を証明しようと試みたし、仏蘭西のニコル・オレームは空間内の運動を数学の用語で記述した。

 千夜鶏鳴結社はブラッドワーディーンの証明から、人の魂をも計算できるのではないかと考え、そうしてそれに至った文献を1650年代にイングランドで自然哲学者のグループが創設した『見えない学校』(オックスフォードのロバート・ボイルの住まいが会場)から発見する。

 神が作り出した人間が、神の手を借りずに作った新たなる人間は、それは人間の救済の為の一歩では無いか、と10世紀~14世紀の錬金術師は考えて、それを実践していた節があるが、ルネサンス前の宗教的弾圧(魔女狩り)のあった暗黒の時代(15世紀)でそれらの流派は魔女狩りで殺し尽くされ、そして滅んだ。百年以上の空白期で失われた知恵はほんの僅かに残された遺物でのみ確認されるが、魔女狩りがなかったら、おそらく科学はもっと凄まじい発展を遂げていただろうとされる。

 現に完全な自動人形であるウィリアムは、現代の(19世紀の)科学では説明できない機能や理解できないシステムでできており、特に脳幹機関に関しては、触れることさえできない。



 ジャン・ジャック・ジョルジュ


AGE:? 性別:男 

家族:天涯孤独。かつてはシャム双生児であり、兄がいた。


身長:178cm


好きなもの:洒落たもの

嫌いなもの:ナンセンスなもの 大袈裟な組織の名前

宝物:双子の兄の頭蓋骨

趣味:特になし


 千夜鶏鳴結社の初期実験体で、第三世代。そのため、シャム双生児として生まれる。第三世代は成功例が幾つかあったため、彼等兄弟は失敗作と見做され、結社から放置され、両親には見世物小屋に売られた。十歳くらいまで双子の兄と見世物として過ごす。

 第三世代は長生きしないのに、十歳を超えて生きていることを知った組織によって再度引き取られ、実験体に逆戻りして、そのせいで兄が死ぬ。

 その日から結社に復讐することを誓っているが、表面上はおくびにも出さず、第三世代特有の優秀な頭脳で実験体から研究員へと出世し、最終的には幹部にまで上り詰める。

 命の冠の少女であるメアリの存在は名前しか知らないが、その娘を作り出すための一滴として自分たちが生み出された事への憎悪は凄まじい。

 何者かの手によって千夜鶏鳴結社が解体された後、研究所からエルドレッドや様々なあちら側の書などを持ち出す。その後、世界各国を渡り歩き、虎視眈々と復讐の刃を研いでいた。

 日本に辿り着いたのは、1893年頃。そこで、武士の時代を終わらせた刀の存在を知り、1894年の夏にそれを盗み出し、帰国する。

 千夜鶏鳴結社という大仰な名前を嫌っている。どんなものでも名前はシンプルなのが良い。

 書に関するすべての物を憎悪している。



《千夜鶏鳴結社》……物質社会に埋もれた魂の救済のため、十六世紀の魔女狩りの折に異端として処刑された錬金術の一派、西方学派の技術を現代に蘇らせる事を目的とした科学結社。十八世紀末に、デュランド子爵トマス・デーナ卿が、ヘンリー・キャヴェンディッシュ卿と共に作り上げた当初は単なる私立学会であったが、トマスの息子、モーリスが跡を継いでからはいかがわしい組織へと変貌している。


 モーリス・デーナ(故人)

 《千夜鶏鳴結社》総帥。メアリの母方の祖父に当たる。

 そもそも《千夜鶏鳴結社》とは、十八世紀末に、デュランド子爵トマス・デーナが、ヘンリー・キャヴェンディッシュと共に作り上げた組織で、本来は《月光の会》のような、多少魔術に傾倒する気配はあったが単なる私立学会の一つであった。しかし、トマス・デーナの死後、彼の息子であるモーリス・デーナが結社の総帥になった頃からその有り様は変わっていく。

 一八二〇年、バイエルンのゾールンホーフェンにて埋められた修道院が発見される。そこで見つかった《書》と自動人形を手に入れたことで、モーリスは『古の錬金術の学派、西方学派を復活させ、《独自の方法で》人を救済するための組織』へと《千夜鶏鳴結社》を作り替えていく。

 書に触れたことで医学および錬金術に関する《経路》が開いたことで、様々な薬物や手術法、遺伝子学などの知識を得るが、書の器ではないため、狂気の扉も開かれた。《書》は人のありとあらゆる可能性を開くが、狂気もまた可能性である。

 敬虔なクリスチャンであったモーリスは、若い頃にグノーシス主義にかぶれていたため、偽りの神からこの世界を取り戻さねばならないという強迫観念に取り憑かれ、そうして黙示録の世界と降臨する救世主を作るために、『命の冠の少女』を作り上げることを決意する。数百、数千体の不幸な実験体の中より、優秀な子供を選りすぐり、更に新しい種を作る実験を五十年繰り返し、そしてついに自分の娘(第五世代)から第七世代を作り出した。


ローレンス・ブラウン……《観測者》オブザーバー。ジャン・ジャックのアドバイザーというか、ブレーンという立場だと思われているが、実際は素材の調達屋の青年。第五世代。人体解剖について天才的な能力を持つ。出生やその目的については未だに謎に包まれている。


   ※    ※    ※


 命の冠の少女を作るために一世紀以上かけて生体実験が為されている。方法は、敢えて双生児として受精させ、その双子を胎内に居るうちに一つに融合させることにより様々な感覚や知能を具えた器を作る。生きている間はわからないが、解剖をすると、二つ以上の臓器や脳があったりする場合がある。


 第一世代→極端な知能障害。無事に生まれてくる例はほぼ無い。多頭児や多腕・多足などの奇形児多し。


 第二世代→知能障害と同時にサヴァン症候群的な天才も多数出始める。

多頭児や多腕・多足などの奇形児多いが、まともに生まれてくる個体もある。


 第三世代→正常な精神と天才的な能力を持つ個体がぼつぼつ出始める世代。多頭児や多腕・多足などの奇形児の代わりにシャム双生児が出始める。


 第四世代→正常な精神と天才的な能力を持つ個体が増える。五体満足であるが、精神疾患、或いは幻覚症状などの症例をもつ個体が多い。生まれたときから麻薬中毒であり、その後遺症の為に成人できた個体は4%前後。格段に病弱で、先天性の遺伝病にかかりやすい。


 第五世代→正常な精神と天才的な能力を持つ個体(ほぼ百%)。問題点はこの世代でほぼ解消されている。阿片の代わりにあちら側の薬物を用いるため、中毒にもならない。書を入れると発狂しやすいのが難点。


 第六世代→より確実性を高めるために実験された世代。不妊に悩む貴族や資産家の婦人へ、資金繰りの為に施されたケースが多い。


 第七世代→メアリ・ジズ。正常な知能を持ち、更に超共感覚を備えた天才。ソフィアの器。

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