COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第219話

公開日時: 2024年5月29日(水) 13:20
文字数:728


 純度の高い魔力。


 狭範囲に圧縮された濃度。


 雪月花の中心を穿ちながら、空間を駆け抜けるように一本の実線が空に走った。


 坂本の目には、少なくともそう視えていた。


 天守閣を見上げた先にある、巨大な雪の花。


 その中心から何かが吐き出されたように、細長い魔力の「線」が伸びる。


 天使は魔力を「目」では追わない。


 人間が空気の流れを視覚化できないように、天使は魔力の流れを視覚“だけで”捕捉しない。


 断層の内部から飛び出てきた魔力の「正体」がなんであれ、それが敵意を持った一撃であることを、魔力の“性質”により察知していた。


 それが、考え得る限り、かなりの深さからやって来ているものであることも。



 「縛」



 キョウカは断層の中から出てきたものが敵の「攻撃」であるということを察知し、雪月花の外部に散りばめていた『残雪』と呼ばれる補助魔法を1箇所に集める。


 『残雪』は、キョウカが作り出した擬似的な“フィールド”だ。


 自らの魔力を実体化した上で、その表面化された魔法領域の内側に、互換性のある魔力媒質を閉じ込める。


 この場合で言えば、雪月花の氷の表面に『残雪』を練り込ませることで、具象化された魔法の“分子領域“に、より細分化された魔力効率を落とし込むことができる。


 基本的な性質として、「魔法」とは物質と非物質の間を行き来する電子回路のようなものだ。


 魔力はその回路の上を流れるエネルギーそのものであり、形を生み出すための「媒体」である。


 魔法は、キャンパスに描かれた絵であり、「魔力」というペンを使って描かれた線である。


 魔力というペンを使って書かれた“文字”は、時間的、あるいは空間的に限られた領域の中で動くことしかできず、キャンパスの「外」に絵を描くことは、原理的に不可能と見ることができるだろう。

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