COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第70話

公開日時: 2023年11月26日(日) 22:48
文字数:902


 「初見」の“肝心”さ。


 先輩は戦況を見守りながら、天使の持つ「特性」についてを話し始めた。



 「リオンはこの大会に何度も出場してるから、自分の情報が相手にも行き渡ってる。今回に関して言えば、有利なのは「相手」の方だ」


 「どうしてですか?」


 「相手はリオンの特性を知りながら行動できる。逆に、リオンは相手の特性についてを何も知らない。その分、“何をしてくるかわからない状態“とも言える」



 天使の戦いは純粋な「魔力の強さ」と、戦術の「組み立て」。


 ただ、それはあくまで基本的な戦闘の【環境=距離感】の中に準ずるもので、生死を分けた局面に投与される根本的なリードではない。


 天使の戦闘面の多くは、魔族を排除するための枠組み(カリキュラム)に向けて教育され、実践への形式を形作る。


 魔族との立ち合いに於いて“2度目”はなく、最初の立ち合いこそが最初であり最後である。


 それ故に戦闘で有利な状況に立つには、相手が“対応できない領域へと足を踏み入れること”が必須であり、最も有効な手段となる。


 ジャンケンで勝負をする時、相手がどの手を出すかはお互い予測しようがなく、相手の性格や特徴を注意深く観察する必要がある。


 例えば天使に於ける「属性」や「魔力量」は、対峙した段階である程度は推し量ることができる。


 これはジャンケンに於いて予測できる“手”の部分を指し、戦いの場に於いての基本原則にもなる。


 しかし“特性”はその原則の「場」の外に展開できるものだと、先輩は言った。


 「特性」とは言わば、ポケットの中にある武器であり、匿名の攻撃手段でもある。


 もちろん戦闘面で役に立たないものもあるが、逆に戦闘面で役立つものであれば、相手との戦闘能力の差を無視して、形勢を逆転できる「奥の手」にもなり得る。



 相手天使がリオン君を倒すことができる可能性——



 それは相手の持つ「特性」が、どのタイミングで行使されるか、その部分によるものが大きいと言った。


 戦局から見てリオン君に隙はない。


 純粋な魔力量の差もかなり開いている。


 相手は近づくことすらままならない状況だった。



 ——にも関わらず、ウォータープールの中心へと舵を取った跳躍。



 “何かあるはずだ”



 先輩はそう感じ取っていた。

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