COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第233話

公開日時: 2024年6月23日(日) 02:12
文字数:885


 ——「シャドウフレア」




 上空から暗闇がやって来る。


 天守閣全体を覆う影。


 空の色を変えるほどの「黒」が、空間全体に滲み出る。


 それはまるで、燃え盛る炎のようでもあった。


 空気の表面を染め上げるかのように広がる靄。


 雲のように淡く、それでいて深い色合いが、キョウカたちの眼前に降り注いだ。



 夜月は咄嗟にギアを解放する。


 『断裁』と呼ばれる薙刀。


 その形状は勇ましく、雄々しい。


 超攻撃型スタイルの彼女にとって、『断裁』は特殊な形状を持つ薙刀だった。


 薙刀にしては短い柄に、彼女の背丈以上に長い刀身。


 “薙刀”と呼ぶには無骨な尖頭が、武器全体のどっしりとした輪郭を形作っていた。


 通常“長柄武器”と言えば、柄よりも刀身が長くはならない。


 とくに薙刀に関しては間合いが広く、斬る以外にも刺突や打撃を与えられることから、古来より歩兵の主力武器として用いられてきた。


 リーチが長く、斬るだけではなく、刺突や石突を使用した打突、また柄での打撃が可能な薙刀は、騎射技術を失った南北朝時代や室町時代の武士たちにとって重要な武器であった。


 南北朝期の戦乱においては矛や槍が短く、槍は刺突武器(突物)や打撃武器(打物)として利用されたが、太刀と薙刀も突物や打物として利用されており、特に広範囲を「打つ」「突く」「斬る」ことのできる薙刀や大太刀(野太刀)が槍より有効であり、利用価値が高かった。


 薙刀や大太刀や長巻は人馬の足を薙ぎ払うことに向いているために、打刀や太刀とは性質の異なる武器と認識すべきであろう。


 「薙刀」は、もともと「長刀」と表記されていたが、のちに「短刀」に対して「打刀」(うちがたな:[刀]のこと)を長刀と呼ぶようになったため、区別する必要から薙刀と表記されるようになった。



 従来の薙刀の形状や在り方とは一線を画す『断裁』。


 仄かな紫色に覆われた刃と、厚みのある広い平地。


 反り上がった鉄の湾曲が、電流を迸らせる彼女の右手を支点に組み合わさり、柄に沿って流れる立体平面上に滑らかな曲線を描いていた。


 巨大な質量が、華奢な腕とは対照的な存在感を持ちながら、総長3m超もの刃渡りを、地面スレスレまで嫋やかに伸ばしていた。


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