COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

守る世界に、キミはいるのか
平木明日香
平木明日香

第221話

公開日時: 2024年6月3日(月) 13:42
文字数:534



 ギュルッ



 回転するように、氷の表面が中心に滑る。


 氷の中から飛び出してきた魔力を封じ込めるように、圧縮される質量が、白く濁る氷塊に犇く。


 さざめく青。


 火花のようにうねる粒子。


 きめ細やかな模様の変化が、空間の中を泳いだ。


 躍動する花の輪郭が、しなやかな線の内側に鋭い弧を描いた。



 空を駆ける線。


 その軌跡は、まるで空を切り裂く“刃”だった。


 坂本の視線の先にあったのは、チサトの風域によって強化状態にあった氷の“層”が、何の前触れもなく綻んでいく「様子」だった。


 柔らかい水の中を進むように飛び出してきた鋭利な”物体”は、空間に線を描くように、濁りのない軌道をサッと伸ばしていた。


 



 バッ



 臨戦態勢を取ったのは、真琴だ。


 彼女は、謎の飛翔物からもっとも近い場所にいた。


 坂本と同様、真琴も瞬時に認識していた。


 “それ”が断層の内側から来たものであること。


 純度の高い魔力を帯びていること。


 弓の弦を指にかける。


 その動作の胸中にあったものは、謎の飛翔体が、どんな「性質」を持っているかだった。


 何らかの意思が働いているものに違いはない。


 氷を穿ったエネルギーの向きや大きさを見て、思考を張り巡らせる。


 視線は飛翔体を追う。


 ただし、意識は断層の内側から逸らさずにいた。


 穴の空いた雪月花の中心。


 その、——奥からは。

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