夜月が懸念していたこと。
それはキョウカが予測していた部分とは、若干ニュアンスが異なっていた。
確かに、キョウカもある程度は認識していた。
エドワードを介して入手した情報は、限られた時間の中での計測とはいえ、それなりの正確さを伴っていた。
魔力の性質や、球体内部の構造。
事前に入手していた断層内部の情報を元に、考えられる化学的性質の内情を加味した上で、その物質の危険性や特徴が、あくまで“サンプルベース”ではあるが、独自の指標において算出されていた。
解析が追いついていない部分があったのも事実だ。
だから、夜月が指摘してきた理由もわかっていた。
“気にも留めていなかった”というのは、そういったプロセスを踏んだ上での思考が、弓を引く初動に強く結びついていたからでもあった。
ただ、キョウカは気づいていなかった。
球体の内部に蠢いているもの。
もしくは、球体の持つ“特質”。
夜月の電磁波がキャッチした情報は、それが“特定の属性に縛られていなかった”という点だった。
特定の属性を伴わない魔力などあり得なかった。
魔法を扱う使役者が天使であれ悪魔であれ、その使役者が持つ属性上の微粒子が、多少なりとも魔力の形質に含まれているのが普通だった。
しかし、それが“無い”。
もちろん、属性を伴わずに魔力関連の反応を扱うことはできる。
使役者の膂力を強化したり、魔力を扱う上での原子間力を、自らの「属性エネルギー」へと変換する際に用いられる“エーテル粒子場(量子化された場)”の反応がそれにあたる。
ただ、これらはあくまで魔力というエネルギーを実体化する上でのプロセス上に経由されるエネルギー領域であり、実体化された魔力に対して、直接的な時間や空間に当てはめられる実用上の物質量(及び物象の状態の量)ではなかった。
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